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2014 年度 実施状況報告書

老化シグナルによる心不全制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26860548
研究機関新潟大学

研究代表者

吉田 陽子  新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任助教 (00586232)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード心不全 / 老化 / 炎症
研究実績の概要

老化に伴い糖尿病やメタボリック症候群、心不全といった疾患が増加することが知られているが、その制御メカニズムは未だ多くの謎に包まれている。p53などの老化シグナルが活性化して様々な臓器で老化が進行することが、心不全をはじめとする加齢関連疾患の発症・進展において重要な働きをしていることが示唆されるが、心不全時に心臓老化が進行していく機序は未だ明らかではなかった。そのため、本研究では不全心において心臓老化が進行し、心不全を発症進展させるという仮説を検証すること、また心不全時に心臓老化が進行する分子機序を明らかにすることを目的として研究を開始した。
野生型マウスに大動脈縮窄術(TAC術)を用いて圧負荷モデルを作成したところ、圧負荷時の心筋組織では炎症細胞浸潤が起こり炎症が惹起されるとともに、血管内皮においてp53が活性化していることが明らかとなった。また骨髄におけるp53レベルも亢進していた。そこで、血管内皮特異的p53欠損マウスや、全身p53欠損マウスの骨髄を移植した野生型マウスにTACを行って心不全モデルを作成したところ、血管内皮や骨髄細胞でp53をノックアウトしたマウスでは心機能が正常に保たれ、心臓の炎症も改善することがわかった。反対に骨髄のMdm2を抑制してp53を活性化させたマウスにおいて心不全モデルを作成し同様の解析を行うと、心臓の炎症が増強し心機能がさらに低下することがわかった。これらの結果から、心不全時に心臓の血管内皮や免疫細胞の老化シグナルが活性化することが心不全の発症・進展に深く関わっている可能性が示唆される。よって、今後、本研究では心不全時に老化シグナルが心機能を低下させる分子機序について検証していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H26年度の研究計画として当初予定した通り、心不全時に心臓で老化シグナルが活性化すること、その老化シグナルが主に血管内皮と骨髄細胞で活性化していることが再検証された。また、血管内皮特異的p53ノックアウトマウス、全身p53ノックアウトマウスの骨髄を移植したマウス、骨髄Mdm2過剰発現マウスの心不全モデルを用いた実験も当初の計画通り遂行でき、心不全時の血管内皮や免疫細胞のp53依存性の老化が心負荷時の心臓炎症や心機能低下に重要な働きをしていることが検証できた。今後の実験計画で使用する予定のマウスモデル(ICAM1中和抗体投与モデル、Adrb2 siRNA投与モデル)についても順調に予備実験が進んでおり、本研究は概ね順調に進展しているものと思われる。

今後の研究の推進方策

これまでの研究結果から、心不全時に心臓の血管内皮や免疫細胞の老化シグナルが活性化することが心不全の発症・進展に深く関わっている可能性が示唆されている。よって、今後は心不全時に老化シグナルが心機能を低下させる分子機序について検証していく。TACを行った各モデルマウスの心臓および骨髄における転写レベル、タンパクレベルでの発現に変化を来す分子を同定し、p53の下流に存在し圧負荷時の心臓の炎症を制御している分子を特定する。また、圧負荷時に血管内皮および免疫細胞でp53が活性化する機序を検証する予定である。
具体的には、これまでの準備実験において、TAC術後2週間後の心臓ではICAM1の発現が亢進していること、また骨髄ではICAM1の主要なリガンドであるインテグリンαLβ2の発現が亢進していることが明らかとなっている。我々は心不全時にはICAM1やインテグリンαLβ2の発現がp53シグナルによって亢進することで、心臓への炎症細胞浸潤が促進され、心臓の老化が生じると考えている。本仮説を検証するために、各モデルマウスにおける心不全時の心臓および骨髄サンプルでICAM1およびインテグリンの発現を検証するとともに、TACを行った野生型マウスにおいて、ICAM1やインテグリンの中和抗体を投与して表現系を解析する。
また、心不全時に血管内皮および骨髄のp53が亢進する分子機序についても検証する予定である。心不全時には種々のシグナルにより交感神経が活性化することが知られている。我々は、心不全時に過剰に活性化する交感神経シグナルが、心不全時のp53活性化に重要な役割を果たしている可能性を検討しており、アドレナリン受容体に対するsiRNA投与によって心臓の炎症や心機能が改善するかなどについても検証する予定である。さらに、心不全時に心臓で惹起される炎症が心機能を低下させる機序についても検証する予定である。

次年度使用額が生じた理由

前年度購入予定であった消耗品が予定より安価で購入できたこと、また実験動物については実験計画上、新規購入よりもすでに飼育中であったコロニーの増殖が優先されたため、予定よりも購入数が少なかったことから次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

次年度へ繰り越した研究費は今年度使用分の試薬や消耗品、実験動物の購入や、国際学会にて研究成果の発表をする際の学会参加費、また研究成果を論文に投稿する際の費用に使用したいと考えている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] p53-induced inflammation exacerbates cardiac dysfunction during pressure overload2015

    • 著者名/発表者名
      Yohko Yoshida, Ippei Shimizu, Goro Katsuumi, Masayoshi Suda, Yuka Hayashi, Shuang Jiao, Tohru Minamino
    • 学会等名
      ESC Congress 2015
    • 発表場所
      ロンドン(英国)
    • 年月日
      2015-08-29 – 2015-09-02
  • [学会発表] 心不全における血管内皮-骨髄老化シグナルの意義2014

    • 著者名/発表者名
      吉田陽子, 清水逸平, 勝海悟郎, 須田将吉, 林由香, 池上龍太郎, 萱森裕美, 焦爽, 南野徹.
    • 学会等名
      第18回日本心不全学会学術集会
    • 発表場所
      大阪国際会議場(大阪市)
    • 年月日
      2014-10-10 – 2014-10-12

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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