研究課題/領域番号 |
26860550
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
嘉嶋 勇一郎 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (70545722)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ヒアルロン酸 / マクロファージ / 血管障害モデル / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
in Vivo実験(血管傷害モデル)にて、マクロファージにおけるヒアルロン酸過剰産生モデルにおいて、新生内膜肥厚の増強を確認した。さらに、ヒアルロン酸合成を特異的に阻害することができる4-methylumbelliferoneを経口投与することでヒアルロン酸産生をノックダウンさせ、血管傷害後の新生内膜肥厚の程度を検討したところ、有意に新生内膜肥厚の進展を抑制することが確認された。したがって、マクロファージ特異的なヒアルロン酸過剰産生が新生内膜肥厚に強く関与していることが示唆されており、現在はそのメカニズムを検討するため、in Vitro実験を開始している。 4% Thiolycolate溶液をマウス腹腔内注射し、4日後に腹腔マクロファージを採取した。マクロファージ特異的にヒアルロン酸を過剰発現させたHAS2/CreLysマウスからのマクロファージを、交配前のHAS2、CreLysから通常のマクロファージをそれぞれのマウスから採取しコントロールとして使用し、マクロファージの性質の差異について検討した。交配前のHAS2、CreLysからコントロールのマクロファージに対し、ヒアルロン酸を溶解したメディウムで培養し刺激を加え、その影響について検討したところ、培養上清中のサイトカイン産生能の増強が確認され、ヒアルロン酸がマクロファージから産生される炎症性サイトカイン産生能の増強に関与していることが示唆された。 今後はさらに、ヒアルロン酸がマクロファージに与える影響についてのメカニズムの詳細を検討すべく、とくにシグナル伝達機構の解明を行っていく方針としている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、in Vivo実験にてマクロファージ特異的なヒアルロン酸過剰産生モデルマウスにおいて血管傷害モデルを作成すると、新生内膜肥厚が増強することが確認できた。平成26年度の計画を継続し、マクロファージ由来のヒアルロン酸が血管傷害後の新生内膜肥厚を増強させるメカニズム、とくにマクロファージにおけるヒアルロン酸によるシグナル伝達について、さらに詳細な検討を加えたい。血管平滑筋細細胞では、ヒアルロン酸が細胞表面に存在するCD44を受容体として、細胞内シグナル伝達機構を介することに、その増殖能と遊走能を高めることを示した(Kashima Y et al PLoS One. 2013;8(3):e58760)。しかしながら、マクロファージにおけるヒアルロン酸のシグナル伝達機構に関する検討は、申請者の知る限りでは報告されていない。前年度までの検討により、ヒアルロン酸がマクロファージの遊走能やサイトカイン産生能に影響を与えていることが確認できたため、それらがどのようなシグナル伝達を介しているのかを中心に検討したい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、主にin vitro実験を中心に進めていく。マウス腹腔マクロファージを採取し、ヒアルロン酸で刺激を加えたうえでタンパク採取を行い、シグナル伝達機構の解明を行っていく。まずは既存のヒアルロン酸の主要な受容体と考えられているCD44を介したシグナル伝達機構を検討し、それらの中和抗体を使用し受容体を阻害した上でのシグナル伝達抑制が確認できるか、あるいはマクロファージにおけるサイトカイン産生能や遊走能の抑制が確認されるかを検討していく。遊走能は、Trans-well migration assayにより、マクロファージ遊走能について評価する。サイトカイン産生能は、ELISAにより培養上清中のヒアルロン酸濃度を測定し、過剰産生モデルや、さまざまな刺激を加えたマクロファージにおける、サイトカインの産生能を評価する。さらに、4-methylumbelliferoneを使用し、マクロファージのヒアルロン酸合成能をノック・ダウンさせ、マクロファージの遊走能やサイトカイン産生能に与える影響について評価していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも安価に研究が遂行できたことから、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と平成27年度経費は27年度の主目標であるシグナル伝達機構の解明のため抗体購入費に使用する。また、研究成果の発表のため、学会出張を予定している。
|