研究実績の概要 |
現在、重症心不全患者の治療として、心臓移植におけるドナー不足問題は根本的解決の見通しはなく、心臓移植以外の方法による真の心筋再生治療法の開発が期待されている。そこで我々は、新規心筋再生治療法として心筋前駆細胞移植の確立を課題とした。我々は、マウスES細胞を用いて、心血管細胞を経時的系統的に検討できる実験系を構築しており(Nature, 2000)、心筋分化においても、高率に心筋細胞に分化する直近の心筋前駆細胞の同定に新たに成功しているFASEB J, 2005)。更にその知見をいかし、ヒトiPS細胞を用いて開発した段階的心筋分化誘導方法(PLoS One, 2011)を用い、未分化細胞⇒中胚葉細胞⇒心筋細胞の分化過程において、心筋細胞の出現する前段階にCCP (cardiomyocyte-committed progenitor)と仮に称する表面マーカーを発現する心筋特異的前駆細胞を同定するにいたった。そして、その表面マーカーであるCCPを用いることでFACSにて容易に純化することが可能となった。そのCCP陽性心筋特異的前駆細胞はin vitroの実験において高度に心筋細胞選択的分化能を有することを見出し、かつ、高効率に心筋細胞に分化することを示した。そこで、同定したCCP陽性前駆細胞を用いて、平成26年度にCCP陽性前駆細胞シートを作成した。それを用いて、平成27年度はラットの冠動脈を結紮した心筋梗塞モデルへの移植の検討を試みた。結果、移植後に、CCP陽性前駆細胞由来の心筋細胞が移植した梗塞部位に認め、移植治療としての可能性を見出した。今後、移植の効率や心機能改善効果を検討し、CCP陽性前駆細胞を生かした治療法の開発が今後重要と考えられた。
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