研究課題/領域番号 |
26860555
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福島 弘之 京都大学, iPS細胞研究所, 研究員 (10713860)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低分子化合物 / 心臓再生 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
近年、生後不変であると考えられた心筋細胞もターンオーバーしていることが報告されている(Bergmann O. Science. 2009.)。心臓内においても幹細胞→前駆細胞→心筋細胞に至る組織再生プロセスが考えられる。しかし、その再生能力は限定的であり、心筋梗塞などの傷害を自然治癒するまでには至らない。また、薬剤(化合物)などの外因的な刺激を加え、生体内の幹細胞の増殖・分化を増強し、生体内の再生を惹起することが考えられるが、薬剤により心臓内の幹細胞・前駆細胞を動員するような組織再生治療法は報告されていない。これまで申請者は、多能性幹細胞から効率的な心筋細胞分化を誘導する新規化合物CDC1を同定し、心筋梗塞に対して一定の治療効果を示している。しかし、この新規化合物は「薬剤」として最適化されていない。本研究では、新規化合物を「薬剤」として最適化し、心疾患に対して薬剤による心臓組織自己再生治療法の開発を目指す。 当該年度では、新規化合物CDC1を「薬剤」として最適化を行うために、主にCDC1の類縁体の合成展開を行い、その活性測定を行った。1つの類縁体に対して複数の濃度の活性を測定するために、これまでに我々が確立したマウスES細胞を用いた心筋分化誘導スクリーニング系を用いた。百種類近くの類縁体を試した結果、いくつかの類縁体は強い活性を示した。また評価を行った類縁体については構造活性相関を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
優れた薬剤を創出するためには、化合物自体の構造に高活性・低毒性を有していることが非常に重要である。この優劣によって、薬剤としての価値が決定するため、シード化合物から多くの類縁体を合成し、生物活性を評価する必要がある。しかしながら、一般的に天然化合物は合成化合物に比べ構造が複雑であり、さまざまな類縁体を合成する段階において非常に困難を要する。本年度は、マウスES細胞を用いた心筋分化誘導スクリーニング系を用いて、百種類近くの類縁体を様々な濃度範囲において、活性及び毒性を評価できたことは順調な進捗であると考えられる。またこの結果に基づき、化合物の構造及び官能基と活性の相関を解析することが可能となった。次年度はこの構造活性相関をもとにより優れた薬剤の創出が可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度において得られた構造活性相関をもとに新たな類縁体を合成し、そのスクリーニングを継続して行う。より薬剤として優れた高活性・低毒性の最適化化合物の開発を目指す。また1つの化合物によって複数の効果を持たせることは非常に困難である。本研究では、HIV/AIDSの治療で用いられるような多剤併用治療を考えている。そこで標的分子既知の様々な化合物ライブラリーを用いて、相加・相乗効果を及ぼす化合物の探索も併せてスクリーニングを行う。CDC1及び有望な類縁体については、梗塞巣に特異的に効果を及ぼす生体吸収性ゼラチンハイドロゲルの開発を進め、ラット亜急性期心筋梗塞モデルに対して治療効果を検討する。治療効果については、梗塞巣の組織学的検査・心エコーによる心機能の評価を行う。これらを相互に結び付けることによって、心疾患に対して薬剤による心臓組織の自己再生治療法の開発及び再生メカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗に必須となる試薬が、当該年度内に納品及び購入が間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究を円滑に進めるために、物品費として使用することを予定している。
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