研究課題
当研究課題において、H27年度には、研究実施計画に沿って、H26年度に引き続きヒトES/iPS細胞からの血管細胞分化誘導技術の改良に取り組んだ。具体的には、フローサイトメトリーを用いてsortingしたFlk(+)VE-cadherin(-)細胞分画からの血管平滑筋細胞分化誘導に関し、各種液性因子の作用および至適血清濃度を検討した。結果、TGFβ1を使用し、低血清で誘導することで、SM2やSM22といった血管平滑筋マーカーを発現する細胞を誘導することに成功した。さらに血管細胞誘導の各ステップをrefineし、現在では血管内皮細胞(EC)誘導に関しても安定して20%以上の分化誘導効率で誘導することが可能となった。これらの分化誘導法において、誘導各ステップでの心血管ホルモンおよびその受容体の発現を詳細に検討した。結果、我々が誘導した血管内皮細胞はエンドセリンを強発現しており、内分泌学的見地からも成熟した血管内皮細胞であることが証明された。また誘導過程で得られるFlk(+)VE-cadherin(-)細胞がBNPを発現、産生していることを見出し、その意義につき現在も検討中である。また、血管関連疾患特異的iPS細胞を用いた研究では、多発性嚢胞腎(ADPKD)患者から樹立したiPS細胞を用いて、ADPKDにおいてなぜ動脈瘤が発生しやすいのかにつき、研究を続けた。PKD患者のうち、臨床的に脳動脈瘤を呈する患者、呈さない患者双方から複数のiPS細胞を樹立し、誘導された血管内皮細胞をDNAマイクロアレイで遺伝子網羅的に解析することで、脳動脈瘤を呈する患者から樹立されたiPS細胞由来ECで高い発現を示す分子Aを見出した。また遺伝歴のある高安病患者から樹立したiPS細胞を用いて血管細胞誘導を行い、研究を推進し、高安病患者iPS細胞由来ECにて高発現するいくつかの遺伝子を同定した。
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Metabolism
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