ラット心不全モデルを用いて、心臓組織低酸素下で発現亢進する因子として分泌タンパク質ペリオスチンを見出した。ペリオスチンはC末端側に4つのスプライシングアイソフォームを有し、正常状態ではエクソン17および21のない一番短いアイソフォームが主に発現し、心不全非代償期にはエクソン17を含有するアイソフォームの発現が上昇していた。そこでまず、ペイオスチンエクソン17ノックアウトマウスおよびエクソン17に対する選択的中和抗体を作成した。心不全モデル(大動脈縮窄モデル、および心筋虚血モデル)を作成し、心機能・心臓炎症線維化マーカー、再生心筋について検討を行い、以下の治験を得た。ペリオスチンエクソン17ノックアウトマウスは野生型マウスと比較して心機能が維持され、組織線維化が抑制されていた。またエクソン17中和抗体を用いた系でもエクソン17ノックアウトマウスで観察された心臓保護作用が確認された。しかしながら、再生心筋(BrdU陽性心筋細胞)の割合は変化を認めなかった。不全心筋において低酸素心臓幹細胞の割合が増えるが、ペリオスチンの選択的阻害では分化方向に誘導できなかったことが予想される。さらに、心臓内肥満細胞がペリオスチンを強発現し、ペリオスチンエクソン17ノックアウトにより成熟肥満細胞の脱顆粒が抑制されていた。未成熟肥満細胞はペリオスチンの発現が弱く、ペリオスチンが肥満細胞の成熟・分化・機能獲得にも影響していると考えられた。RNA-seqを用いた解析では、ペリオスチンエクソン17ノックアウトマウスで特にNF-kB経路が抑制されていることも明らかとなった。今後はペリオスチン以外のスプライシングバリアントスイッチが引き起こす病態形成について、網羅的な解析を予定している。
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