研究実績の概要 |
これまで肺高血圧の動物モデルとしてモノクロタリンを用いたラットモデルが使われてきた。これはモノクロタリンにより血管炎が起こり、肺血管の中膜肥厚による血管リモデリングを来すモデルである。我々はモノクロタリンモデルラットにPGI2封入ナノ粒子を気管内投与し、肺動脈圧や肺血管リモデリングが改善することを確かめている。しかしこのモノクロタリンモデルラットはヒト特発性肺動脈性肺高血圧症の血管病変の一部を再現するにとどまるため、肺高血圧動物モデルとしては不十分である。一方で最近用いられているVEGF受容体拮抗剤を1回皮下注し、その後3週間10%酸素に暴露して作成するSUGENモデルラットは、内膜や中膜肥厚、Plexiform lesionといったヒト特発性肺動脈性肺高血圧症に類似した肺血管病変を来す(Abe et al. Circulation 2010)。このモデルラットは3週間で肺高血圧を来すようになるが、その後も肺血管病変が進行する。現在は低酸素暴露が終了した後に薬剤を投与することが多いが、それが最適な時期であるかはわかっていない。そのためPGI2封入ナノ粒子を3,4,5週後に単回or複数回投与し、その最適な投与時期や回数を検討する。またPGI2封入ナノ粒子内のPGI2は約1週間でその7割が放出され、その後徐放され30日後にほとんど放出される。PGI2封入ナノ粒子投与2,3,4週間後に、動物用カテーテルを用いた肺動脈圧測定や同時期に得られた肺組織での肺血管リモデリングの程度などから、効果判定時期を検討する。最適な投与時期・回数・効果判定時期が決定した後はPBS,FITC封入ナノ粒子との比較を行った。
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