PGI2誘導体であるベラプロストを封入したナノ粒子を作成した。まずはこのベラプロスト封入ナノ粒子の効果を肺高血圧モデル動物であるSugen/hypoxiaラットを用いて検討した。Sugen/hypoxiaラットはVEGF受容体拮抗剤を皮下注し、10%酸素環境下で3週間飼育後常酸素にすると肺高血圧が形成されるモデルである。ベラプロスト封入ナノ粒子をVEGF受容体拮抗剤投与3週間後に、噴霧用スプレーを用いて気管内に単回投与し、その2週間後に右室収縮期圧、右室/左室重量比、肺血管リモデリングの程度をPBS及び薬剤無封入ナノ粒子と比較した。ベラプロスト封入ナノ粒子投与群では、PBS及び薬剤無封入ナノ粒子群と比較して、有意な右室収縮期圧の低下、右室/左室重量比の低下、肺血管リモデリングの改善がみられた。また古典的な肺高血圧モデル動物であるモノクロタリンラットも用いて同様の検討を行った。モノクロタリンラットは、モノクロタリンを皮下注し2-3週間後に肺高血圧が形成されるモデルである。ベラプロスト封入ナノ粒子をモノクロタリン投与2週間後に、噴霧用スプレーを用いて気管内に単回投与し、その2週間後に右室収縮期圧、右室/左室重量比、肺血管リモデリングの程度をPBS及び薬剤無封入ナノ粒子と比較した。結果はsugen/hypoxiaモデルと同様で、ベラプロスト封入ナノ粒子投与群では、PBS及び薬剤無封入ナノ粒子群と比較して、有意な右室収縮期圧の低下、右室/左室重量比の低下、肺血管リモデリングの改善がみられた。モノクロタリンモデルラットでは生存率に関しても検討し、ベラプロスト封入ナノ粒子投与群では、PBS及び薬剤無封入ナノ粒子群と比較して有意な生存率の改善がみられた。
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