研究課題
本年度は(1)器質的異常を伴わない家族性洞不全症候群の遺伝学的背景の解明を目的として、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析を行い、同時に(2)新規原因遺伝子MYH6変異による疾患発症メカニズム解析を行った。(1)については心疾患、心機能関連遺伝子群を選抜し、カスタムプローブを作成して網羅的にシークエンスを行った。サンガー法による確認の後に、日本人データベースHGVDなどと比較して、未報告あるいはレアバリエーション(Minor Allele Frequency<0.5%)の検出を行った。その結果、既に知られているペースメーカチャネルなどの遺伝子異常に加えて、新たな原因遺伝子として転写因子遺伝子Aやチャネル遺伝子Bを見つけることができた。それぞれの遺伝子変異については、サンガー法で家族の遺伝子もシークエンスし、家系内での遺伝型・表現型連関を確認した。一部の遺伝子変異については機能解析実験系を開始しており、新たな家族性洞不全症候群のメカニズムの解明を行っている。(2)についてはMYH6遺伝子変異が伝導遅延をもたらすことが、洞不全症候群を導く電気生理学的異常であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本年度の目標は(1)洞不全症候群の網羅的遺伝子解析を行うことと(2)すでに見つけていた洞不全症候群変異の分子病態を明らかにすることであった。(1)についてはシークエンスを行った結果、これまで予期しなかった原因遺伝子を見つけることができ、家系内集積性も確認できた。これらについては強制発現系を中心とした機能解析系に既に着手している。(2)については、予備研究ですでに見つけていたMYH6遺伝子変異の機能解析を行い、新たな病態メカニズムを提示することができた。研究の進捗はおおむね当初の予想通りであると思われる。
今回新たに見つかった遺伝子変異について、強制発現系を用いたin vitro実験を中心にして新規病態メカニズムを明らかにしていきたい。また複数家系にまたがって見つかった遺伝子については家族内の罹患者・非罹患者を引き続き集積し、罹患者に注目して遺伝子型に基づく特徴的臨床像の確立を試みたい。
当初の予想に反して次世代シークエンスの結果が思わしくなく、追加シークエンスを行うために2015年1月に20万円の前倒し請求を行った。実際に追加シークエンスには20万弱の出費となり、研究は遂行できたが、もともと2015年度の予算であるため、残額を2015年度の研究に充てるために次年度使用額が0でなくなった。
次世代シークエンサーで得られた結果として、新規疾患遺伝子変異を見つけたので、その機能解析を行う予定である。実際には機能解析の中心である細胞培養系のメディウムなど消耗品に使用する予定である。
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