研究課題
洞不全症候群は一般に基礎心疾患に続いて二次的に発生することが多いが、一部の患者では基礎心疾患なしに発症することがあり、その一部は遺伝子異常に起因する。本年は昨年度国際誌に報告を行った心筋サルコメア遺伝子MYH6変異に続き、いまだ未知の原因を見つけるために、心臓に発現するとされる心臓遺伝子200個を選び、次世代シークエンサー(NGS)を用いたターゲットシークエンスにより原因遺伝子を探索した。その結果、これまでのサンガーシークエンスによるスクリーニングでは約3分の1の患者においてしか変異を見いだせなかったが、NGSにより新たに約3分の1の患者に病因変異の候補を見つけることができた。この中には既知の原因遺伝子だけでなく、これまでに報告のない新規原因遺伝子も2つ含まれていた。今回採用した、心臓遺伝子を対象としたNGS解析は、費用対効果の高い遺伝子変異解析技術であった。続いて各原因遺伝子変異の機能解析を行い、病態の検討を行った。まず既知の原因遺伝子として、昨年度報告したMYH6変異が3例、TBX5変異が3例、HCN4変異が1例見つかった。HCN4変異はパッチクランプ法によってチャネル機能を検討したところ、変異保有者にみられる徐脈を証明する機能喪失型変異であることが分かった。また新規原因遺伝子として、チャネル遺伝子Xを見つけた。これは3世代にわたり、青年期から発症する重症徐脈患者に見いだされた。ヒト心房筋cDNAライブラリより目的のチャネル遺伝子cDNAをクローニングし、強制発現系を用いて機能解析を行った。その結果、チャネルそのものは細胞膜に存在し、多量体の形成には成功するものの、イオンチャネルとしての機能が著しく阻害されており、洞結節や心房興奮の興奮発生・拡散を早期に遮断すると推察された。現在、この研究結果を論文にまとめているところである。
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