抗老化タンパク(SMP30)欠損(KO)マウスを用いて加齢に伴う酸化ストレスの亢進と冠血管攣縮の発生機構の関連について検討した。今回、8-10週の野生型(WT)マウスとSMP30KOマウスを用いて冠動脈の酸化還元状態を評価した。また、WTマウス、KOマウスより大動脈を摘出し、アセチルコリン投与後の一酸化窒素の産生量をfree radical analyzerを用いて測定し比較した。まずMonocholobimane蛍光染色にて冠動脈におけるチオール基の酸化還元状態を評価した。細胞内外のチオール基に由来する蛍光強度は、WTマウスと比較しKOマウスで減少した。また、グルタチオンアッセイキットにて大動脈における総グルタチオン、酸化型グルタチオンおよび還元型グルタチオン濃度を計測したが、KOマウスの大動脈はWTマウスと比較し、総グルタチオン、還元型グルタチオン濃度は低下し、酸化型グルタチオン濃度は上昇した。続いて、WTマウス、KOマウスより大動脈を摘出し、アセチルコリン投与後の一酸化窒素産生量をfree radical analyzerを用いて測定し比較した。その結果、アセチルコリン投与後、WTマウスと比較しKOマウスでは一酸化窒素産生は減少した。今回の研究により、SMP30KOマウスの冠微小血管および大動脈では、酸化ストレスが亢進し、血管内皮細胞においてthiol酸化が促進していることが判明した。また、血管内皮依存性の血管拡張作用を有する一酸化窒素の産生がSMP30KOマウスにおいて減少することも判明した。このことは、加齢による酸化ストレスの亢進が、一酸化窒素産生の低下および冠血管攣縮に関与している可能性を示唆するものと思われた。
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