研究実績の概要 |
今年度はiPS細胞から心筋細胞への安定した誘導法とlong non coding RNAs (lncRNAs) の解析方法を確立した。心筋細胞への分化誘導法は二次元培養にて各種サイトカインを時期特異的に添加し誘導した(Masumoto H., Sci Rep., 4: 6716. 2014)。誘導したサンプルは経時的に回収し、total RNA抽出して各ステージの心筋分化誘導関連因子にてqPCRによる解析を行った。この結果、iPSCから中胚葉系(T, MESP1)、心筋前駆細胞(NKX2-5, GATA4)、心筋細胞(cTnI, alpha MHC)への遺伝子発現変化を確認できた。これらのRNAのうち、特に初期ステージのRNAを用いて更にRNA-seq解析を行った。この結果、マウスでは報告があるもののヒトでは機能が不明な新たなlncRNAが一過性に強発現していることが明らかとなった。中胚葉誘導期から心筋細胞分化初期に最も強い変化を起こし、心筋細胞成熟過程においては速やかにその発現を減じるものという選択基準を持ってRNA-seqの結果を検討した。いくつかの候補の中でもHox gene clusterに存在しMESP1と同様の局在を示す遺伝子のアンチセンスであるlncRNAの動態が最も選択基準に合致した。取得された全長は、これまでの報告と異なったことから、RACE法による全長を再取得しおよそ3.4 kbpの配列解析に成功した。機能解析においては、siRNAによる当該lncRNAのknock downと、overexpressionによる心筋分化誘導における影響を検討するための準備を整え、そのメカニズム解析としてRNA pull downによる複合体形成タンパク解析を行うための基盤構築を行った。
|