昨年度までに報告した内容をもとに、Biotin化Uridineを用いたlncRNAを作製し、心筋分化誘導中のiPS細胞タンパク質と反応させた。さらに、Streptavidin magnetic beadsを用いて、RNA-タンパク質の複合体をRNA pull downした。RNA pull downされたタンパク質はSDS-PAGEにて分離し、MS解析にて各分画に含まれるタンパク質を同定した。この結果、複数のRNA結合タンパク質が含まれていた。次にこれらのうち、心筋分化に関連すると報告されている3つのタンパク質の抗体を用いて、再度RNA pull downしたタンパク質にてWBを試みた。しかしながら、これらのタンパク質は全て陰性であり、非特異的にRNAに結合したタンパク質を選択した可能性が高い。そこで現在、新たなタンパク質の選択も進めている。またBiotinとStreptavidinの結合力は高いことが報告されているが非特異的な結合も多いことが報告されているため、RNA pull downには適していない。そこで新たなRNA pull down法として、Flagを付与したRNA分子を用いることで低バックグラウンドな解析が可能となるため、こちらも引き続き検討したい。 近年、lncRNAの新たなアプローチとして、lncRNAから翻訳される機能性ペプチドの解析が注目を浴びている。これはlncRNAから翻訳される100前後のアミノ酸ペプチドで、骨格筋にてlncRNA由来の機能性ペプチドが作用することで筋再生に関与することが報告されている(Matsumoto et al. Nature 2017)。我々のlncRNAも本報告と同様の配列が13 peptides存在していることから同様のメカニズムにて心筋分化誘導に関与している可能性がある。今後はこれらの視点も踏まえて研究を進めていく。
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