研究課題/領域番号 |
26860580
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
宮川 浩太郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60725612)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腹部大動脈瘤 |
研究実績の概要 |
我々は筋細胞に特異的に発現しているカベオラ関連タンパク質であるMURCを単離、同定し、MURCと動脈硬化、大動脈瘤進展の関連について研究を行っている。我々が作成した全身MURC-KOマウスでは傍大動脈へのCaCl2浸漬による腹部大動脈瘤モデルにおいて、WTマウスに比較して有意に腹部大動脈の外径、内径が拡大するという結果を得ており、さらにMURC-KOマウスのCaCl2浸漬による腹部大動脈瘤モデルでは、腹部大動脈瘤の組織像においてより高度に中膜の弾性線維の断裂を認めるという結果を得ている。CaCl2大動脈瘤モデルではsham群と比較し、JNKの活性亢進を認め、MURC-KOマウスのCaCl2大動脈瘤モデルでは、WTマウスのCaCl2大動脈瘤モデルに比べて有意にJNKの活性が亢進している結果が得られた。MURC overexpression、knockdownを行った血管平滑筋細胞(VSMC)においてTNFα刺激を行い、無刺激のものに比べてJNK活性の亢進を認め、MURC knockdownを行ったVSMCではControl群に比べて有意なJNK活性の亢進を認めた。さらにMURC-KOマウスのCaCl2大動脈瘤モデルでは、WTマウスのCaCl2大動脈瘤モデルに比べて有意にMMP-2の発現亢進を認め、MURC knockdownを行いTNFα刺激を行ったVSMCでもControl群に比べて有意なMMP-2発現の亢進を認めた。またApoE-KOマウスとMURC-KOマウスの交配により、ApoEとMURCのダブルノックアウトマウスを作製し、アンジオテンシンⅡ持続投与による大動脈瘤モデルも作成した。ApoEとMURCのダブルノックアウトマウスでの大動脈瘤モデルでは、ApoE-KOマウス、MURC-KOマウスに比べて有意に腹部大動脈の内径が拡大するという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、MURCの欠失はRho/ROCKシグナルの抑制を介して血管平滑筋細胞の増殖、遊走能の抑制を起こし、動脈壁の脆弱化を引き起こす可能性を考えていたが、Rho/ROCKシグナルの活性化に関与している分子の検索、評価が難渋した。そのため炎症機転、線維化の亢進が大動脈瘤径増大に関与していると考え、JNK、MMP-2といった分子の検討を行った。当初の予定とは異なるが、JNK、MMP-2については有意な差をもった結果が得られた。また大動脈瘤モデルにおいても傍大動脈へのCaCl2浸漬によるモデルに加え、アンジオテンシンⅡ持続投与によるモデル作成においても、大動脈瘤の内径において有意な結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
大動脈瘤進展に関与する分子として、JNK、MMP-2に加え、Smad2についても検討を行う。また線維化亢進について、Masson's tricrome stainingでは有意な線維化亢進の結果が得られたが、Sirius red stainingにおいても有意な差が得られるか検討する。線維化の評価として腹部大動脈瘤モデルの組織、VSMCにおいて、Collagen1、3等の発現について検討を行う。炎症機転、線維化の亢進と腹部大動脈瘤径拡大の機序における関連について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Western blottingやZymogramに用いる試料等は以前使用していたものを用いたため新規購入分が予定より少なく済んだ。また当初予定していたRhoA activity kitについては検討項目の変更により購入を行わなかった。マウスの系統維持にかかる費用を他研究者と共用で負担したため少額で抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
Western blottingやZymogram、RNA抽出のためのキット、試料の購入。線維化の評価を行うための組織標本の作製費用。MURC-KOマウス、ApoE-KOマウス、MURCとApoEのダブルノックアウトマウスの系統維持と大動脈瘤モデル作製のための試薬、手術器具の購入を行う。また研究成果の学会発表、論文作成における経費として使用する予定である。
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