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2015 年度 実施状況報告書

iPS細胞を用いた新規動脈硬化抑制因子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 26860583
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

楠本 大  慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70571727)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード動脈硬化 / iPS細胞
研究実績の概要

現在日本における心・脳血管障害などの動脈硬化性疾患の死亡数は悪性腫瘍より多い。しかし動脈硬化治療は危険因子管理が主体であり、根本的治療は存在しない。動脈硬化の進行は糖尿病、高血圧などの様々な危険因子によって規定されるが、日常臨床において動脈硬化リスクが非常に高いにもかかわらず動脈硬化が全く存在しない症例を時折経験する。そのような症例では遺伝的に非常に強力な抗動脈機構を有していると考えられる。本研究ではそのような抗動脈硬化患者より人工多能性幹(iPS)細胞を樹立し、動脈硬化病態の首座である血管内皮細胞に分化させることで、内因性の抗動脈硬化機序を解明し、根本的治療に結びつく創薬を行うことを目的とする。まず最初に抗動脈硬化患者の選定を行った。糖尿病患者は通常であれば血管障害が強力に促進されているはずであるが、大血管障害(動脈硬化)や細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)が全く存在しない患者を抗動脈硬化群として選定した。これらの患者よりiPS細胞を樹立し血管内皮細胞へ分化誘導を行った。誘導された血管内皮細胞で表現型の確認を行うと、酸化ストレスに誘導される炎症惹起、老化が抑制されることが分かった。次にMicroarrayによる網羅的解析を行い、抗動脈硬化患者において新規因子FactorX発現が上昇していることが分かった。FactorXを血管内皮細胞に強制発現させることにより、炎症・老化が抑制されることが分かった。また炎症促進させる因子として知られるNFkBの活性化も抑制した。次にFactorXを血管内皮細胞特異的に強制発現させるトランスジェニックマウスの作成を行い、急性血管障害モデルで動脈硬化類似病変が抑制されるかどうか検討した。結果、血管障害に誘導される内膜肥厚、および炎症惹起、NFkBの活性化が抑制されており、in vivoでもFactorXが炎症抑制に有用であることが判明した

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

iPS細胞に誘導される血管内皮細胞を用いた実験においては、当初計画していた通り、抗動脈硬化患者においては炎症惹起、老化が抑制されていることが分かった。またMicroarrayを用いた網羅的解析によりFactorXを同定し、強制発現を行う細胞実験において、炎症・老化を抑制できることが分かった。また抑制の機序としてNFkBの関与が考えられた。以上細胞系を用いた実験としては予想通りの結果を得ることができた。次に動物を用いた実験に関してであるが、当初はFactorXを強制発現させたトランスジェニックマウスと、動脈硬化モデルマウスのAPOEノックアウトマウスを交配させることで実験を行う予定であったが、交配に予想以上の時間がかかり、またその後の解析にも多くの時間を必要とすることから予定を変更し、急性血管障害モデルにおいて炎症の評価を行うこととした。予定外の変更ではあったが、血管障害モデルに落ちてFactorXが炎症を抑制できることを証明することができ、結果として予定通りの進捗状況となった。

今後の研究の推進方策

現在までに、上記の通りiPS細胞より誘導した血管内皮細胞を用いた実験により、抗動脈硬化患者では炎症・老化が抑制されることが分かり、そのKey factorとしてFactorXを得ることができた。またFactorXの抗炎症効果がin vivoの実験でも示すことができた。次にFactorXがどのような機序で抗炎症・抗老化を示すかを検討する必要がある。現時点でNFkBの抑制がKeyとなる可能性が示されているが、実際にFactoXがNFkBをどのように抑制するのかは未知である。そこで、質量分析法を用いてFactorXに結合するたんぱく質を同定することで機序を検討する方針とした。現在までに質量分析法による結合蛋白の候補を選定しており、今後どのタンパク質がKeyとなるか細胞を用いた実験で示していく予定である。また動物を用いた実験においても、従来の予定通り、FactoXとAPOEノックアウトマウスを交配させ、急性炎症のみならず、慢性炎症の病態においてもFactorXが有用であることを示していきたい。

次年度使用額が生じた理由

昨年度、国際学会での研究発表を予定していたが、研究の進捗状況より行わない方針とした。そのため旅費に関して繰り越しを行う方針とした。また研究の首座がiPS細胞を用いた実験から、細胞や動物を用いた実験にシフトしていったことで、iPS細胞培養に使用するコストを削減することができたため消耗費も軽減することができた。

次年度使用額の使用計画

研究発表をあるいは今後の研究計画を検討するための最新情報を得るため、積極的に国内・海外学会への参加を検討したい。そのため旅費として申請予定である。また消耗費に関しては抗体や試薬などを購入し、今後の実験計画に当てていきたいと考えている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] G-CSF supports long-term muscle regeneration in mouse models of muscular dystrophy.2015

    • 著者名/発表者名
      Hayashiji N, Yuasa S, Miyagoe-Suzuki Y, Hara M, Ito N, Hashimoto H, Kusumoto D, Seki T, Tohyama S, Kodaira M, Kunitomi A, Kashimura S, Takei M, Saito Y, Okata S, Egashira T, Endo J, Sasaoka T, Takeda S, Fukuda K.
    • 雑誌名

      Nat Commun.

      巻: 13 ページ: 6745

    • DOI

      10.1038/ncomms7745

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Analysis of cardiomyocyte movement in the developing murine heart.2015

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto H, Yuasa S, Tabata H, Tohyama S, Seki T, Egashira T, Hayashiji N, Hattori F, Kusumoto D, Kunitomi A, Takei M, Kashimura S, Yozu G, Shimojima M, Motoda C, Muraoka N, Nakajima K, Sakaue-Sawano A, Miyawaki A, Fukuda K.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun

      巻: 464 ページ: 1000-1007

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2015.07.036.

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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