本年度は大動脈瘤発症メカニズムに関する細胞生物学、分子生物学的解析を行った。(1)マウスより分離した初代血管平滑筋細胞を用いて、Hic-5の欠損により細胞レベルで細胞外マトリックス(コラーゲン、エラスチンなど)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP2)の発現量が減少することを明らかにした。この結果は前年度に解析したHic-5欠損マルファン症候群マウスの表現系と一致している。 (2)遺伝子発現解析アレイを用いて、網羅的にHic-5が働きかけている応答遺伝子を解析した。Hic-5の欠損により発現増加する遺伝子 1600種類と発現減少する遺伝子1800種類を同定した。大動脈瘤発症に関わった細胞外マトリックス関連遺伝子の解析ではHic-5の欠損により多くの遺伝子が減少することが明らかとなった。Hic-5は細胞外マトリックスの破壊に関わるマトリックスメタロプロテアーゼだけではなく細胞外マトリックスの産生にも関与することが判明した。
|