研究課題
現在までに末梢動脈疾患の患者では、活性酸素産生の原因となるNADPH oxidaseが増加していることが報告されている。また、NADPH oxidaseの増加は、内皮機能不全へ繋がるeNOSのuncouplingと関係している。一方でHDLは酸化ストレスを軽減し、内皮機能を改善することが分かっている。そこで、FAMPの活性酸素産生の経路に対する影響を調べるため、FAMP投与群と非投与群で虚血肢中のNADPH oxidase 2 (NOX2)を測定した。その結果、FAMP群で有意に減少していることが分かった。これにより、FAMPがeNOSの活性に関与している可能性も考えられた。次にin vitroの実験で、FAMPによるヒト血管内皮細胞に対するeNOS活性化、細胞内伝達因子への影響を検討した。その結果、FAMPは血管内皮細胞におけるAkt、ERK、eNOSを活性化させることが分かった。PI3K/Aktの阻害薬であるLY294002はFAMPによるeNOSの活性化を阻害したが、ERK阻害薬であるPD98059ではeNOSの活性化は阻害されず、FAMPのeNOS活性化作用はPI3K/Aktの経路を介していると考えられた。さらにFAMPの効果を検討するため、scratch injury modelで血管内皮細胞遊走能への影響を検討した。その結果、FAMP群はcontrolと比べ有意に遊走能が増強しており、NO産生阻害薬であるL-NAMEはFAMPによる内皮細胞の遊走促進作用を阻害した。さらに通常食群と高コレステロール食群のマウスのHDLを用いて、そこにFAMPをincubationしたものを添加したところ、高コレステロール食群マウスのHDLによる遊走能の改善を認めた。
2: おおむね順調に進展している
研究目的であった血管内皮細胞を使用したin vitroにおけるFAMPの血管新生メカニズムを明らかにすることは、ある程度実現できているため。
FAMPの効果的な投与方法、脂質輸送体・受容体の検討や、FAMPによる血管新生遺伝子導実験を行う。
最小限のサンプル測定で結果を出すことができたため、その分繰越金が発生した。
今後の推進方針であるFAMPの効果的な投与方法、脂質輸送体・受容体の検討や、FAMPによる血管新生遺伝子導実験に必要な試薬などの購入を行う。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
International Journal of Cardiology
巻: 207 ページ: 317-25
10.1016/j.ijcard.2016.01.012.