研究実績の概要 |
本研究は今後臨床で使用することが期待される各融合遺伝子への薬剤に対する獲得耐性機序を解明することを目的としている。これまでの研究成果を以下に記載する。 ALK,ROS1,RET耐性細胞に共通し、気管支肺胞上皮幹細胞に元来備わるEGFRやMETを含めた生存シグナルの内で耐性株特異的に活性化している分子を同定しその発現機構を探索する ALK,ROS1,RET耐性状態において、がん細胞内で安定して生存シグナルを送るタンパクを同定することとした。これらのタンパクはHSP90のシャペロン分子である可能性が高いため、HSP90阻害の標的となる分子を検索した。 ALK遺伝子再構成を有する細胞株H3122に対して、クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ耐性の細胞株を樹立。ROS1遺伝子再構成を有する細胞株HCC78に対して、クリゾチニブ耐性株は作成中。RET遺伝子再構成を有する細胞株LC2/adに対して、ヴァンデタニブ、アレクチニブ耐性株を樹立した。まず、H3122のアレクチニブ耐性株(H3122AFR)に対してもHSP90阻害薬が有効であることを確認し、HSP90阻害薬投与前後でタンパク発現量が変化したペプチド群を、マススペクトル解析(iTRAQ)を用いて同定した。この結果をさらにタンパク質の細胞内シグナルパスウェイ解析(David)を行い、FAK/paxilin/Src/CrlII/CrkL/p130Casシグナル系の変化を確認した。今後、このシグナル系を阻害することで、耐性株に対して感受性を持つ薬剤のスクリーニングを行っていく。
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