研究課題/領域番号 |
26860596
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
際本 拓未 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80724773)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Siglec-F / 好酸球 / 気道リモデリング / 喘息 |
研究実績の概要 |
マウス好酸球特異的に発現するSiglec-Fは、好酸球をアポトーシスに誘導することで炎症制御に関与する(Kiwamoto T, et al. Pharmacol Ther. 2012 & Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2013)。これはヒト好酸球特異的に発現するSiglec-8に相当し、申請者は気道上皮及び気管粘膜下腺に発現している粘液ムチン(Muc4及びMuc5b)がSiglec-Fリガンド能を有していることを見出した(Kiwamoto T, et al., J Allergy Clin Immunol. in press)。上記結果はこれまで未知であった気道粘液ムチンのSiglecを介した炎症制御を示す重要な成果であり、実際の疾患モデルでの検証が待たれている。こうした背景を踏まえ、現在は慢性気道炎症に伴う形態変化で獲ある気道リモデリングが粘液ムチンをリガンドとしたSiglec-F経路に及ぼす影響を検証している。 本研究推進に当たり、本年度は主に本実験で使用する気道リモデリングの病態モデルをSiglec-F欠損マウスと同じ、一般にBalb/cより作成困難とされるC57BL6マウスで気道リモデリングが作成可能かの検証を行った。その結果、C57BL6であっても気道構造変化を伴う気道リモデリングモデルが作成可能であることを確認した。また、予備実験において、気道リモデリングモデルにおいても高度の気道炎症をきたしている群においてリガンドの発現量が亢進していることが示唆された。今後は実際の病態において、ムチン分画ごとのリガンド活性の変化等を検証していく予定である。結果についてはこれまでの知見と併せ、日本呼吸器学会、米国糖鎖生物学会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の平成26年度の到達目標はC57BL6系マウスにおける卵白アルブミン(OVA)反復刺激による気道リモデリング病態の構築と気道リモデリング形成に伴うMuc4及びMuc5bの発現・糖修飾障害の解明であった。前者については、前述の通り複数の実験プロトコールを検証し投与計画の検討を行い、C57BL6マウスでリモデリングの作成は可能であることを確認した。また、長期曝露後の検体では予備実験レベルでは高度の気道炎症をきたしている群においてリガンドの発現量が亢進していることが示唆された。 しかしながら、Muc4及びMuc5bそれぞれのもつリガンド活性変化の検証は不十分であり今後さらなる検討を要すること、また初年度に搬入予定であった遺伝子改変マウス(Siglec-F欠損マウス、 Siglec-F欠損-ヒトSiglec-8ノックインマウス)の搬入が次年度にずれ込んだことにより現時点での進捗度は、(3) やや遅れているとした。既にSiglec-F-Fc, Muc5b, Muc4といったリガンドの発現レベルを評価する標識抗体は既に入手されており、現在は検体の蓄積を行っているところとなっている。また、繁殖及び施設間の搬入ルールの制約により導入が遅れた遺伝子組み換えマウスについては既に動物実験計画書・組み換え遺伝子実験計画書の承認を得ており、本学に搬入可能な指定ファームで順調に繁殖されているため次年度中に導入される見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、気道リモデリング形成に伴うMuc4及びMuc5bの発現・糖修飾障害の解明を行う。 具体的には、①気道リモデリング形成時には杯細胞が過剰に形成されており、ムチンの分画に変化が生じているものと予想される。本研究では気道リモデリング系構築後、分泌型ムチンであるMuc5bと細胞表面発現型ムチンであるMuc4の発現量を、急性炎症群及び慢性炎症群それぞれで比較する。具体的にはマウスより肺検体及びBALF検体を採取し、まずウェスタンブロッティング法で評価を行う。有意な差が期待できる場合はELISA法にてMuc4及びMuc5bを定量評価する。タンパク発現量での比較が困難な場合は、Real Time PCR(現有設備)での比較を検討する。②気道リモデリングに伴う上皮の構造変化はMuc4/Muc5b のSiglec-Fリガンド活性を付与する糖修飾プロセスに異常をきたしていることが予想される。本解析においては、申請者らが確立したSiglec-F/ヒトIgG-Fc領域キメラ蛋白(Siglec-F-Fc)を用いたWestern blotting法でリガンド活性を持つ分子を検出する方法を応用し(Kiwamoto T, et al., J Allergy Clin Immunol. 2014)、肺Muc4及びMuc5bを免疫沈降法にて抽出、Siglec-F-Fcで標識することで各病態におけるムチンリガンド活性の変化を定性的に比較する。上記2点を検証する。 また、上記検討で有意差が期待できる場合は現在導入手続き中のSiglec-F欠損マウスを用いてSiglec-F経路の障害が糖鎖リガンドに及ぼす影響を検証する。
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