研究実績の概要 |
マウス好酸球特異的に発現するSiglec-Fは、好酸球をアポトーシスに誘導することで炎症制御に関与する(Kiwamoto T, et al. Pharm acol Ther. 2012 & Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2013)。これはヒト好酸球特異的に発現するSiglec-8に相当している。申請者は気道上皮及び気管粘膜下腺に発現している粘液ムチン(Muc4及びMuc5b)がSiglec-Fリガンド能を有していることを見出した(Kiwamoto T, et al., J Allergy Clin Immunol. 2015)。上記結果はこれまで未知であったSiglecを介した好酸球性気道炎症制御機構の存在を示す重要な成果であり、実際の疾患モデルでの検証が待たれる。 本年度はマウスSiglec-Fのリガンドとなる気道粘液ムチンを定量化・分画を抽出するための試適条件検討を継続しておこなった。さらに、前年度に見出されたSiglecのリガンド候補であるヒアルロン酸の合成障害をきたしかつ喘息関連遺伝子と考えられているヒアルロン酸合成酵素HAS2についても動物モデルでさらなる検証を行った。具体的には、HAS2欠損マウスを導入し、野生型群とアレルギー性気道炎症病態を比較したところ、HAS2欠損マウス群においてより高度の好酸球性気道炎症を惹起することを確認した。 上記の通り、Siglecの機能障害に伴う気管支喘息難治化のメカニズムの解明に際し、ヒアルロン酸機能異常の関与の可能性を当初の計画以上の成果として見出すことに成功した。
|