現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に実施した研究成果としては, 肺気腫マウスモデルの標準的なプロトコールである,1日4本・週6日の6ヶ月間の喫煙曝露をC57BL/6マウスに行い,肺気腫マウスモデルを作成した.肺気腫モデルマウスより, 肺胞細胞(肺胞マクロファージ, Ⅱ型肺胞上皮細胞)を抽出した(primary cell). A群:肺気腫(6ヶ月喫煙曝露)B群:コントロール(6ヶ月空気曝露).細胞の寿命に関しては, 肺胞細胞におけるテロメラーゼ活性(TeloTAGGG Telomerase PCR ELISA)を測定し,肺胞マクロファージと他の細胞とのテロメラーゼ活性の比較を喫煙の有無で行った. その結果, 喫煙モデルマウス群において,肺胞マクロファージではテロメラーゼ活性が上昇し, Ⅱ型肺胞上皮細胞では低下していた.また,喫煙誘導モデルマウスにおいてTERT免疫染色を行ったところ,肺胞マクロファージで発現が上昇していた.さらには,COPD患者の肺組織において免疫染色をおこなったところ,肺胞マクロファージでTERT発現が上昇していた. これらの結果により,COPDでは肺胞マクロファージにおけるTERT活性が上昇し,テロメラーゼ活性が亢進し寿命が延びている可能性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
COPDの肺胞マクロファージの寿命の計測:COPDにおける肺胞マクロファージの正確な寿命を測定することで,本研究の仮説を証明することができる.喫煙誘導肺気腫モデルマウスを作成し, 肺胞細胞(肺胞マクロファージ, Ⅱ型肺胞上皮細胞)を抽出する.その後,テロメア長さをフローサイトメトリーで計測する(Telomere PNA kitを使用). 肺胞マクロファージの寿命が延長していることが予想されるため, 寿命に関わる因子;アポトーシス, 細胞老化, に関して検討を行う. *アポトーシスアッセイ(caspase3/7 assay, Western Blot Anarysis),senescenseアッセイ(senescense assay, real-time PCR(p21, p16)). COPDの肺胞マクロファージの寿命に関わる遺伝子検討:TERT, p21, p16以外の寿命に関わる遺伝子群や, 炎症に関わる遺伝子群の変化をマイクロアレイを用いて網羅的に検討する. また, 変化があった遺伝子に関しては, mRNA発現変化をPCR法で確認する. *マイクロアレイ(microarray assay), mRNA発現の確認(real-time PCR). テロメラーゼ活性から炎症につながる遺伝子シグナルの検討:肺気腫モデルマウスより抽出した肺胞マクロファージおけるTERT遺伝子発現が増加していることを確認の上, TERT遺伝子につながるNF-κBシグナルの活性を測定する. また, その下流の炎症性サイトカイン産生についても確認する.*NF-kBシグナル活性(NF-κB,IκB;Western Blot Analysis),*炎症性サイトカイン産生(TNF-α,IL-1β;Real-time PCR, ELISA).
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次年度使用額の使用計画 |
1.喫煙誘導肺気腫モデルマウスまたはCOPD患者から, 肺胞細胞(肺胞マクロファージ, Ⅱ型肺胞上皮細胞)を抽出する.その後,テロメア長さをフローサイトメトリーで計測する(Telomere PNA kitを使用).アポトーシスアッセイ(caspase3/7 assay, Western Blot Anarysis),senescenseアッセイ(senescense assay, real-time PCR(p21, p16))を行う. 2.遺伝子群の変化をマイクロアレイを用いて網羅的に検討する. また, 変化があった遺伝子に関しては, mRNA発現変化をreal-time PCR法で確認する.3.TERT遺伝子につながるNF-κBシグナルの活性を測定する(NF-κB,IκB;Western Blot Analysis). また, その下流の炎症性サイトカイン産生についても確認する(TNF-α,IL-1β;Real-time PCR, ELISA).
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