研究実績の概要 |
本研究では肺気腫モデルマウス及びCOPD患者の肺胞マクロファージでのテロメラーゼ活性を解析し,COPDの慢性炎症のメカニズムを検証しさらにはテロメラーゼ活性阻害剤を用いた新たな治療法の開発を検討することを目的としている. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は肺の炎症反応による進行性の気流制限を呈する疾患である.COPDの病態は肺胞マクロファージを中心とした気道・肺実質・肺血管構造における炎症反応である.喫煙の持続により,肺胞上皮細胞や血管内皮細胞ではテロメラーゼの活性が抑制され細胞老化に至る.COPDにおける肺胞マクロファージは寿命が延長して肺胞内に停滞する期間が長く,慢性炎症の原因となると考えられている.また,動脈硬化領域でも,動脈硬化巣のマクロファージにおけるテロメラーゼ活性が高く,動脈硬化の進行に関与していると報告されている.また,telomerase reverse transcriptase(TERT)の誘導がマクロファージ自体の老化を抑制すると報告されている.COPDでは同じ肺胞内で細胞の種類により喫煙による影響が異なり,肺胞マクロファージのテロメラーゼ活性を解析することで,持続する慢性炎症と病態の進行を解明できる可能性が期待される. 平成28年度までの研究実績より, COPDでは同じ喫煙による影響でも, テロメラーゼ活性は肺胞マクロファージで亢進し, Ⅱ型肺胞上皮細胞では低下していた. そして, 肺胞マクロファージではTERT活性が上昇し, 肺胞マクロガージのテロメアの短縮を抑制していた. 喫煙により肺胞マクロファージにおけるテロメラーゼ活性が上昇し, 寿命の延長することが確認され, 慢性炎症の病態の一因であることが示唆された.
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