研究実績の概要 |
肺原発神経内分泌がん細胞株(H1155, H1299, SHP-77など)を用い、Sonic Hedgehog ligandおよびSmoothened agonistなどによるHedgehog経路活性化を試み、細胞増殖への影響を評価したが顕著な変化は認められなかった。しかしながら、Hedgehog経路の因子に対する阻害薬による影響を評価したところ、細胞増殖抑制効果が認められた。 このことは、ligandによる経路刺激のない状況においても、神経内分泌がん細胞株においては恒常的にHedgehog経路が活性化されているものと考えられた。 阻害薬による増殖抑制効果については、複数の薬剤による評価を行ったが、増殖抑制効果には大きなばらつきがあり、また、Hedgehog経路の重要な伝達因子であるGli-1やGli-2のmRNAの発現量には大きな変化が認められなかった。阻害薬によるHedgehog経路の阻害効果が非特異的かつ不完全であることが想定されたため、Gli-1, Gli-2のsiRNAによる経路阻害を図ったところ、mRNA levelでのGli-1, Gli-2の明らかな阻害効果を認め、かつ、腫瘍細胞株に対する顕著な増殖抑制効果を認めた。 この効果は、細胞障害性抗がん薬であるシスプラチンとの併用において相乗的な効果を示しており、apoptosisの増加も認められた。Gli-1, Gli-2の発現を確実に抑制することが腫瘍細胞における増殖抑制に不可欠なものであることを明らかにした。 臨床的にも、肺がん症例におけるSonic Hedgehog経路の阻害薬とシスプラチンなどの細胞障害性抗がん薬との併用による効果は限定的であったという結果が得られており、上記知見は、Sonic Hedgehog経路阻害薬による阻害効果が不完全なものであることに起因する可能性があるものと考えられた。
|