研究課題/領域番号 |
26860601
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
立石 知也 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (40645636)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 動物実験 / マウス好塩基球 |
研究実績の概要 |
我々は本研究では、ブレオマイシン吸入による肺線維症マウスモデルにおいて好塩基球がいかなる機序で線維化に関係するか明らかにすることを目的としている。我々の現在までの実験結果において、ジフテリアトキシンによって好塩基球が特異的に除去されるMcpt8DTRマウスにおいては好塩基球除去によりブレオマイシン吸入による肺線維化が著しく悪化することが病理組織学的に認められた。そのため、今年度は1) microarray法により好塩基球除去したブレオマイシン線維化モデルの肺全体と、好塩基球除去しないコントロールの比較と、2) Mcpt8DTRマウスにジフテリアトキシンを投与して悪化した線維化が再び好塩基球の補充において改善するかの検討を実験で行った。 1.microarray法の結果について 予備実験の結果最も、mRNA量が肺内で増加していたブレオマイシン吸入4日後にコントロール群と好塩基球除去した群のmRNA発現を比較したところ、好塩基球除去群において線維化を示すCollagenやTroponinをコードするmRNAが増加しており、ほかに炎症性のマーカーではHmgb1やIL9の系統にも差が認められた。 2.好塩基球の再補充実験について マウス骨髄をIL-3添加で培養することにより誘導した骨髄由来好塩基球(Bone marrow derived basophil: BMBa)を Mcpt8DTRマウスにジフテリアトキシンとともに経静脈投与を行い実験を行っている。現在までの検討では病理組織に有意な改善を認めず、生存率に変化も見られない。BMBaの投与を週に2回のみ行っているが、より高頻度の投与など、実験系の検討を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標であった、2項目であるmicroarray法の施行、好塩基球の再補充実験ともに着手できているため、「おおむね順調」とした。 microarrayについては、ブレオマイシン吸入前後の好塩基球のみでの発現遺伝子の比較も施行を検討しており、必要な細胞数、マウスの数が解析できればこちらのデータも得ることができる。好塩基球の再補充実験については条件検討が進んでおり、こちらも早期にデータが得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
microarray法の結果により、好塩基球の除去が、線維化のごく早期より線維化マーカーの発現に影響を与えていることが明らかとなった。好塩基球のみのmicroarrayを行い、これに影響を与える因子を絞りたいと考えている。線維化抑制に関わる好塩基球の因子の候補が絞れた場合、好塩基球除去下においても、この因子の投与により肺線維化の改善が見られるかを検討する必要がある。現在のところ、好塩基球が産生するIL4やmicroarray法で示されたHmgb1、IL9の系統のサイトカイン、ケモカインなどを候補として考えているが、もしその因子が線維化改善に寄与するようであれば、好塩基球除去と関連しない肺線維化モデルでの有効性も検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はマウスに関して、烏山一先生のご厚意により遺伝子改変マウスの提供をいただき、実験に主として使用したため、マウスの購入費が著しく当初の見立てより低かった。また実験の進捗状況により、2回目のmicroarrayを未施行であるため実験費用が少なくなっているが、これはそのまま次年度に行うため、相殺されるものと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
前段の通り、2回目のmicroarray実験を行う予定であるほか、次年度は野生型マウスを多く使用することが予想されるため、その費用や、候補遺伝子の量を検討するための定量的PCRを多く行う予定であるためその試薬の費用などに使用される予定である。
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