我々は好塩基球と肺線維化の関係についてマウスモデルを用いて検討している。肺線維化のマウスモデルとしては、ブレオマイシンを経気道的に吸入させるブレオマイシンモデルを用いている。まず、マウス好塩基球抗体の投与や、ジフテリアトキシンを用いてマウス好塩基球を除去できるマウスにおいて、好塩基球を除去したところ、ブレオマイシン吸入による肺線維化が悪化することが病理組織学的に認められた。また我々はIL-4欠損マウス、IL-4受容体欠損マウスにおいてブレオマイシン肺線維症モデルにおける炎症、線維化が悪化する時期があることを確認している。IL4産生細胞を蛍光により観察できるG4マウスの解析からは、BLM吸入モデルにおけるIL4産生細胞は主として好塩基球であることが分かっている。これらの結果から得られる現状の仮説では、好塩基球はIL-4の産生を通じてTh2反応を惹起することで相対的にTh17反応を減弱させ、肺線維化の抑制に関与していると推測している。 また好塩基球除去群とコントロール群の遺伝子発現を網羅的に解析したマイクロアレイ法を施行したところ、好塩基球除去群においてHMGB1発現が強いことが確認された。HMGB1と好塩基球の関わりはいままで示されておらず、今後の研究の中で好塩基球 / IL-4 / HMGB1がどのように線維化、組織修復に関与するのか解明したい。 特発性肺線維症(IPF)の治療においてはステロイド薬や免疫抑制薬が使用されるが、効果は限局的で致死的な経過をとることが多い。これは、IPFの病態が十分に解明されていないために治療のターゲットを決定できないことに起因すると思われる。少数の既報ではあるが、HMGB1が肺線維症、気管支拡張症に関与することが示されてきており、今後有望な治療ターゲットとなりうる可能性がある。
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