ホスホリパーゼCε(PLCε)は低分子量GTP 蛋白質Ras/Rap の標的タンパク質で、非免疫細胞に高発現しており、ヘルパーT細胞2型の気道炎症において重要な役割を果たしていることを報告してきた。近年、肺線維症の病態として、ヘルパーT細胞2型の免疫応答が線維化関連のサイトカインの分泌を介して肺の線維化に促進的に作用することが報告されている。そこで、本研究では、PLCεの遺伝子改変マウスとブレオマイシン誘導性肺線維症モデルを用いて、肺の線維化におけるPLCεの役割を明らかにすることを目的に解析を行った。まず、PLCεの遺伝子型の肺線維症の表現型に与える影響を調べるために、ブレオマイシン誘導性肺線維症マウスモデルを作成し、ブレオマイシン投与後21日目に肺組織を取り出し、病理組織学的に解析を行ったところ、PLCε欠損マウスでは、炎症細胞の浸潤やコラーゲンの沈着が著明に抑制されていることを明らかにした。また、PLCεの欠損により、ブレオマイシン投与後7日目の気管支肺胞洗浄液中の好中球やリンパ球の増加が抑制されることが明らかとなった。以上より、PLCεは好中球やリンパ球を介する肺線維症の形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。今後の予定として気管支肺胞洗浄液中のヘルパーT細胞2型のサイトカインをELISAで定量し、ヘルパーT細胞2型の免疫応答の関与を明らかにすること、上皮からの炎症性サイトカインの産生に与えるPLCεの影響を明らかにすること、PLCεの過剰発現マウスを導入して表現型の解析を行うことなどの実験を継続して行う予定である。
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