インフルエンザ等のウイルス性感染症は普遍的ではあるが、高齢者・合併症のある患者では致死的となりうる重要疾患である。その診断は一部ウイルスにペーパークロマトグラフィー法を利用した検出キットが実用化されているのみである。本研究では、一般に成人における急性気道感染症の主要な起炎ウイルスであるインフルエンザA.B型に着目した、迅速診断を開発することを目的とする。まず、臨床分離株を用い、PCRの組成や反応条件の検討を行い、その応用として、冬季に流行したインフルエンザウイルスの検体により検討を行う。具体的には従来法では、RT-PCR法による結果と外来受診時のキット判定との比較により感度を比較する。さらにマルチプレックス法による、1つの検体からインフルエンザA型かB型か、もしくわ陰性かを同時に判定できるシステムを構築する。一方、PCRに要する時間が約10分ほどで行うことができる超高速PCR装置によりインフルエンザウイルスの同定を行う。本装置は熱板の上を、サンプルを封入した円盤プレートが高速に回転することで、短時間にPCRの増幅を行うことができる。またリアルタイム装置も備えているため電気泳動をする必要もないので短時間且つ簡便に行うことができる。この超高速PCRシステムが確立された場合、病棟でのベッドサイド診断など院内感染を防いだり、老人保健施設などでのアウトブレイク対策にもなる。 本研究では、インフルエンザについて外来診療の検査でキットの判定は陰性であったにかかわらず、PCR法では陽性であった例もあり、PCR法の有用性が明らかとなった。 今後の展望としてインフルエンザのみならず、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど何種類かのウイルスについて、同時に判定できるシステムを構築することでさらなる効果を得られることが予測される。
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