研究課題
CHOK1細胞を用いた発現系でリコンビナントヒトSP-AとリコンビナントヒトEGFR細胞外ドメイン(sEGFR)を調整し、下記の実験に用いた。まず125I-EGFとヒト肺線がん細胞株A549細胞を用いたbinding assayを行ったところ、SP-Aは濃度依存性にEGFとEGFRとの結合飽和度を低下させることがわかった。SP-AのEGFシグナル抑制作用は、SP-Dと同様にEGFRのリガンド結合を阻害するというメカニズムであることが示された。次にLigand Blotによって、SP-AはA549細胞由来のEGFRに直接結合することが分かった。さらにsEGFRを用いてSP-Aとの相互作用を詳細に検討した。Ligand BlotとELISAによって、SP-AはsEGFRに直接結合することが分かった。表面プラズモン共鳴センサーにおける検討でも、sEGFRとSP-Aの結合が確認され、KD = 2.4 × 10-7 Mであった。この結合は、EDTAやマンノースの添加によって阻害されることはなかった。またPNGase処理によってN型糖鎖を切断したsEGFRにもSP-Aは結合した。SP-AはEGFRの細胞外ドメインに直接結合することがわかったが、SP-Dが糖鎖認識領域を介してEGFRのN型糖鎖へ結合するのに対して、SP-Aはレクチン活性には依存せず、またEGFRのN型糖鎖を介さずに結合することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
これまでにSP-Aが肺がん細胞株のEGFシグナルを抑制し、増殖や浸潤を抑制することを明らかにしていたが、平成26年度はリコンビナントSP-A、sEGFRを大量に精製し、SP-AのEGFシグナル抑制作用の作用機序を解明すること、SP-AとEGFRの直接的な相互作用を解明することを目標とした。SP-AのEGFシグナル抑制作用は、SP-Dと同様にEGFとEGFRの結合を阻害するというメカニズムであることを明らかにした。またLigand BlotによってSP-AはA549細胞由来のEGFRに直接結合することが分かった。Ligand Blot、ELISA、表面プラズモン共鳴センサーにおける解析によって、SP-AはEGFRの細胞外ドメインに直接結合するが、SP-Dが糖鎖認識領域を介してEGFRのN型糖鎖へ結合するのに対して、SP-Aはレクチン活性には依存せず、またEGFRのN型糖鎖を介さずに結合することが明らかになった。以上より当初、予定していた実験計画は順調に進んでいると考えている。
(1)SP-Aのペプチドマッピングを行い、SP-AのEGFシグナル抑制効果の作用点を特定する予定である。具体的にはまず大量に生成したリコンビナントヒトSP-Aをリジルエンドペプチダーゼで処理し、HPLCでペプチド断端を分離した上で、質量分析を用いて、それらのペプチドを特定する。いずれのペプチドが肺がん細胞のEGFシグナルに影響を与えるのかを検討したり、sEGFRと結合するかを検討する。(2)マウス肺線がん細胞株LLC細胞を野生型マウスとSP-Aノックアウトマウスへ皮下移植したり、尾静脈から投与し、形成された腫瘍の比較検討を行うことで、生体内でのSP-Aの抗腫瘍作用の意義について検討する。(3)(1)においてEGFシグナル抑制効果を持つペプチドを特定できれば、それを肺がんモデルマウスの血液中に投与することにより、抗がん剤として応用することが出来ないかを検討する予定である。
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