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2014 年度 実施状況報告書

肺サーファクタント蛋白質のEGFシグナル制御を介した抗腫瘍作用の解明と臨床応用

研究課題

研究課題/領域番号 26860611
研究機関札幌医科大学

研究代表者

長谷川 喜弘  札幌医科大学, 医学部, 助教 (90643180)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード肺サーファクタント / SP-A / SP-D / EGFR / 肺がん
研究実績の概要

CHOK1細胞を用いた発現系でリコンビナントヒトSP-AとリコンビナントヒトEGFR細胞外ドメイン(sEGFR)を調整し、下記の実験に用いた。まず125I-EGFとヒト肺線がん細胞株A549細胞を用いたbinding assayを行ったところ、SP-Aは濃度依存性にEGFとEGFRとの結合飽和度を低下させることがわかった。SP-AのEGFシグナル抑制作用は、SP-Dと同様にEGFRのリガンド結合を阻害するというメカニズムであることが示された。次にLigand Blotによって、SP-AはA549細胞由来のEGFRに直接結合することが分かった。さらにsEGFRを用いてSP-Aとの相互作用を詳細に検討した。Ligand BlotとELISAによって、SP-AはsEGFRに直接結合することが分かった。表面プラズモン共鳴センサーにおける検討でも、sEGFRとSP-Aの結合が確認され、KD = 2.4 × 10-7 Mであった。この結合は、EDTAやマンノースの添加によって阻害されることはなかった。またPNGase処理によってN型糖鎖を切断したsEGFRにもSP-Aは結合した。SP-AはEGFRの細胞外ドメインに直接結合することがわかったが、SP-Dが糖鎖認識領域を介してEGFRのN型糖鎖へ結合するのに対して、SP-Aはレクチン活性には依存せず、またEGFRのN型糖鎖を介さずに結合することが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでにSP-Aが肺がん細胞株のEGFシグナルを抑制し、増殖や浸潤を抑制することを明らかにしていたが、平成26年度はリコンビナントSP-A、sEGFRを大量に精製し、SP-AのEGFシグナル抑制作用の作用機序を解明すること、SP-AとEGFRの直接的な相互作用を解明することを目標とした。SP-AのEGFシグナル抑制作用は、SP-Dと同様にEGFとEGFRの結合を阻害するというメカニズムであることを明らかにした。またLigand BlotによってSP-AはA549細胞由来のEGFRに直接結合することが分かった。Ligand Blot、ELISA、表面プラズモン共鳴センサーにおける解析によって、SP-AはEGFRの細胞外ドメインに直接結合するが、SP-Dが糖鎖認識領域を介してEGFRのN型糖鎖へ結合するのに対して、SP-Aはレクチン活性には依存せず、またEGFRのN型糖鎖を介さずに結合することが明らかになった。以上より当初、予定していた実験計画は順調に進んでいると考えている。

今後の研究の推進方策

(1)SP-Aのペプチドマッピングを行い、SP-AのEGFシグナル抑制効果の作用点を特定する予定である。具体的にはまず大量に生成したリコンビナントヒトSP-Aをリジルエンドペプチダーゼで処理し、HPLCでペプチド断端を分離した上で、質量分析を用いて、それらのペプチドを特定する。いずれのペプチドが肺がん細胞のEGFシグナルに影響を与えるのかを検討したり、sEGFRと結合するかを検討する。
(2)マウス肺線がん細胞株LLC細胞を野生型マウスとSP-Aノックアウトマウスへ皮下移植したり、尾静脈から投与し、形成された腫瘍の比較検討を行うことで、生体内でのSP-Aの抗腫瘍作用の意義について検討する。
(3)(1)においてEGFシグナル抑制効果を持つペプチドを特定できれば、それを肺がんモデルマウスの血液中に投与することにより、抗がん剤として応用することが出来ないかを検討する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Surfactant protein D suppresses lung cancer progression by downregulation of epidermal growth factor signaling.2015

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa Y, Takahashi M, Ariki S, Asakawa D, Tajiri M, Wada Y, Yamaguchi Y, Nishitani C, Takamiya R, Saito A, Uehara Y, Hashimoto J, Kurimura Y, Takahashi H, Kuroki Y
    • 雑誌名

      Oncogene

      巻: 34 ページ: 838-845

    • DOI

      10.1038/onc.2014.20. Epub 2014 Mar 10

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 肺サーファクタント蛋白質のEGFシグナル制御を介した抗腫瘍作用2015

    • 著者名/発表者名
      長谷川喜弘, 高橋素子, 有木茂, 高宮里奈, 上原康昭, 橋本次郎, 和田芳直, 高橋弘毅, 黒木由夫
    • 雑誌名

      分子呼吸器病

      巻: 19 ページ: 107-111

  • [雑誌論文] 肺サーファクタントタンパク質SP-Dによる肺癌の進展の抑制2015

    • 著者名/発表者名
      高橋素子, 長谷川喜弘, 黒木由夫
    • 雑誌名

      THE LUNG-perspectives

      巻: 23 ページ: 65-69

  • [雑誌論文] The mechanisms of epidermal growth factor signaling suppression by pulmonary surfactant protein D.2014

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa Y
    • 雑誌名

      Trends in Glycoscience and Glycotechnology

      巻: 26 ページ: 159-165

    • DOI

      10.4052/tigg.26.159

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The single N-glycan deletion mutant of soluble ErbB3 protein attenuates heregulin β1-induced tumor progression by blocking of the HIF-1 and Nrf2 pathway.2014

    • 著者名/発表者名
      Takamiya R, Takahashi M, Uehara Y, Ariki S, Hashimoto J, Hasegawa Y, Kuroki Y
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 54 ページ: 364-368

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2014.10.086

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 肺サーファクタント蛋白質AとDによるEGFシグナルの抑制作用2014

    • 著者名/発表者名
      長谷川喜弘, 高橋素子, 有木茂, 高宮里奈, 上原康昭, 橋本次郎, 浅川大樹, 田尻道子, 和田芳直, 高橋弘毅, 黒木由夫
    • 学会等名
      第87回日本生化学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [学会発表] 肺サーファクタント蛋白質DによるEGFシグナル制御機構2014

    • 著者名/発表者名
      長谷川喜弘
    • 学会等名
      第2回札幌呼吸器フロンティアセミナー
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2014-07-03 – 2014-07-03
  • [学会発表] 肺サーファクタント蛋白質のEGFシグナル制御を介した抗腫瘍作用2014

    • 著者名/発表者名
      長谷川喜弘, 高橋 素子, 有木茂, 高宮里奈, 上原康昭 橋本次郎, 高橋弘毅, 黒木由夫
    • 学会等名
      第13回肺サーファクタント分子病態研究会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2014-06-21 – 2014-06-21
  • [学会発表] Surfactant proteins A and D suppress lung cancer progression by downregulation of EGF signaling2014

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa Y, Takahashi M, Ariki S, Takamiya R, Uehara Y, Hashimoto J, Takahashi H, Kuroki Y
    • 学会等名
      American Thoracic Society 2014 International Conference(ATS2014)
    • 発表場所
      San Diego (USA)
    • 年月日
      2014-05-16 – 2014-05-21

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公開日: 2016-06-01  

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