研究課題
上皮増殖因子受容体(EGFR)は肺がん治療における標的分子として重要である。また肺サーファクタント蛋白質AとD(SP-AとSP-D)が抗腫瘍作用を持つことを示唆する臨床報告がある。我々はSP-DがEGFRの糖鎖に結合することで、EGFRのリガンド結合を阻害し、EGFシグナルを抑制し抗腫瘍作用をもたらすことを報告した。SP-Aにも同様のEGFシグナル抑制作用を認めることから、本研究ではSP-AのEGFシグナル抑制作用の機序を明らかにすることを目的とした。CHOK1細胞を用いた発現系でリコンビナントヒトSP-AとリコンビナントヒトEGFR細胞外ドメイン(sEGFR)を大量に調整し、以下の実験を行った。まず、125I-EGFを用いたbinding assayにより、SP-AはEGFとEGFRの結合飽和度を低下させることがわかった。SP-AのEGFシグナル抑制作用は、SP-Dと同様にリガンド結合の阻害というメカニズムであることが示された。次に、SP-AとsEGFRの相互作用をLigand Blot、ELISA、表面プラズモン共鳴センサーにより解析した。SP-AはsEGFRに直接結合したが、SP-Dが糖鎖認識領域を介してEGFRの糖鎖に結合するのに対して、SP-Aでは糖鎖を介さずに結合することがわかった。さらに、SP-Aのペプチドマッピングを行い、作用点を特定することを目指した。リコンビナントSP-Aをリジルエンドペプチダーゼで切断し、HPLCでペプチド断端を分離した上で、質量分析でペプチドを特定した。精製したSP-A由来ペプチドを肺線がん細胞株A549細胞に添加し、EGFシグナルや細胞増殖への影響を検討した。いずれのSP-A由来ペプチドもSP-Aのような抑制作用を示さなかった。SP-AのEGFシグナル抑制作用にはSP-Aの立体構造が重要である可能性が示唆された。
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分子呼吸器病
巻: 20 ページ: 123-123