研究課題/領域番号 |
26860615
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大澤 要介 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (50528429)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ペルオキシレドキシン / スルフィレドキシン / 概日リズム / BRET / 赤血球 / 睡眠時無呼吸症候群 / 間欠的低酸素 / K562 |
研究実績の概要 |
本研究では、タンパク質の会合による生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を用いて、抗酸化酵素ペルオキシレドキシン2(Prx2)の二量体形成と単量体への解離の概日リズムを測定してきた。本測定で疑似赤血球として予備検討に用いているヒト赤白血病細胞株K562はチオレドキシンレダクターゼ(TrxR)が赤血球よりも多く発現しており、Prx2二量体のS-S結合がより速く還元され、単量体に解離してしまうため、二量体形成に由来するBRETシグナルが得られる時間が極めて短かった。そこで、過酸化水素により酸化されたPrx2のシステイン残基(Cys-SOH)がさらに酸化された過酸化Prx2(Cys-SOOH)を再び酸化Prx2に還元するスルフィレドキシン(Srx)に着目し、BRETを用いた概日リズム測定系を構築できるか検討した。従来のPrx2プローブ同士の組み合わせではK562のTrxRを2,4-ジニトロクロロベンゼンで阻害した後、過酸化水素を添加して同調させることで概日リズムが生じていたが、Prx2とSrxプローブの組み合わせでは何も添加しなくても自律的な概日リズムが得られた。Srxによる過酸化Prx2の還元反応は大変ゆっくり進むため、長時間に亘ってBRETシグナルが持続したと考えた。また、SrxはPrx2と近縁のPrx3の過酸化型に対するアフィニティーが還元型の5倍高いことから、Srxの過酸化Prx2に対する指向性がBRETシグナルの増強に寄与したと推測した。
以上の研究から、過酸化Prx2の高感度センサーとして、新たにSrxをBRETプローブに加えることで、Prx2のシステインスルフィン酸残基の酸化還元に由来する概日リズムを測定する実験系を確立した。Prx2とSrxプローブの組み合わせは阻害剤や過酸化水素による同調が不要であるため、より生理的な条件で概日リズムを測定することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Prx2の概日リズムを任意の酸素濃度で測定するため、炭酸ガスインキュベーターと光電子増倍管を搭載したルミノメーターKronos Dio (ATTO)に窒素ガスの吸入口と酸素センサーを増設したが、システム上のトラブルや酸素センサーの故障があり、原因究明と修理のため、実験が約半年間滞ってしまった。また、交付申請時には予定されていなかった研究室の大幅改装を行ったために約2ヶ月間ほとんど実験ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究で新たに開発したPrx2とSrxのBRETプローブを用いて、任意の酸素濃度おける概日リズムの測定の至適化を行い、睡眠時無呼吸症候群の患者検体の概日リズムの測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の発生は“11.現在までの進捗状況”の(理由)に記載したような機器の故障や研究室の引越に伴う研究の遅延により、平成27年度に補助事業期間延長承認申請を行ったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に使用する消耗品の購入に充てる予定である。
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