研究実績の概要 |
特発性肺線維症における肺組織でのwnt10A発現と特発性肺線維症の急性増悪との関連性を外科的肺生検組織を用いて免疫染色にて評価した。外科的肺生検を実施し病理学的にも通常型間質性肺炎パターンが確認できた30例の特発性肺線維症症例が対象となった。全症例の生存期間中央値は肺生検を起点として1240日であり、急性増悪発症者が10例にのぼった。なお、死亡した15例の死因内訳は6例が急性増悪、4例が呼吸不全、4例が癌、1例が他疾患であった。さて、外科的肺生検組織を用いた免疫染色による線維芽細胞におけるwnt10A陽性細胞の割合を算出し、ROC解析にて得られた10%のカットオフ値をもって、10%以上の線維芽細胞が染色されている症例を陽性群としたところ、wnt10A陽性群13例、陰性群17例と区分けし検討することになった。それぞれの症例背景を比較したが、年齢・性別・BMI・動脈血酸素分圧・肺機能・KL-6などの間質性肺炎マーカー・呼吸困難の程度など、基本背景には差異がないものの、wnt10A陰性群では生存期間が長いことが示された(log-rank, hazard ratio [HR] 5.351, 95%CI 1.703-16.82; p = 0.0041)。なお、13例のwnt10A陽性群において8例(61.5%)が術後1年以内に急性増悪を生じていた。また、多変量解析にてwnt10Aは特発性肺線維症の急性増悪の予測因子であることが示された(Odds ratio [OR] 13.69, 95 % CI 1.728-108.5; p= 0.013m)。
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