研究課題
腎臓病において腎エリスロポエチン(EPO)産生細胞(REP細胞)は形質を変え、臓器線維化を担う細胞、筋線維芽細胞へと形質転換する。その際に、REP細胞がEPO産生能を失い、線維化を強く引き起こす形質となることを我々は示してきた (JASN 2013)。本研究は、EPO産生の主要制御系であるプロリン水酸化酵素、低酸素誘導性因子(HIF)シグナルへの介入による低酸素応答増強がREP細胞の機能保護につなれるかを複合遺伝子改変マウスを用いて検討するものである。本研究により、腎性貧血の合併を阻止するとともに腎線維化を抑制する『低酸素応答活性化によるREP細胞保護両方』の開発の分子基盤を明らかにできると考えている。本年度は、前年度に作成したREP細胞特異的なPHD欠失マウスの解析を継続した。REP細胞におけるPHDアイソフォーム(PHD1, PHD2, PHD3が主なアイソフォーム)の欠失により腎EPO産生は一側尿管結紮モデルにおける腎障害下においても保たれることが明らかとなった。興味深いことに、PHD1とPHD3の欠失は、生理的状態では、過剰なEPO産生を生じさせないが、線維化モデルにおけるEPO産生の低下を抑制することが明らかとなった。加えて、EPO産生細胞でのPHD1、PHD2、PHD3の欠失は腎の線維化、炎症を悪化させないことが判明した。これらの成果を、米国腎臓学会雑誌2月号に報告した (JASN 2015)。
3: やや遅れている
当初の予定では、恒常的活性化HIF-2a発現マウスを導入し、REP細胞におけるEPO発現におけるPHDによるHIF2aの分解の効果を検討する予定であったが、同マウスの共同研究者よりの輸入が遅れている。
共同研究者のNorthwestern大学Susan Quaggin教授よりHIF2aの恒常活性化マウスを輸入し解析を行う。また、継続して細胞内シグナルや低酸素応答の解析を行う。
本年度に計画していた作成予定マウスが入手困難であったため、同年度の一部計画が施行できなかったため。
計画していたマウスモデルを輸入作成するための経費として使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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