研究課題
酸化ストレスは細胞ダメージを引き起こし急性および慢性腎不全を含む様々な疾患の病態形成に関与する。申請者らは独自に樹立した転移RNA 特異的な抗体と質量分析装置による解析から細胞障害時の転移RNA(tRNA)の挙動を検知することが新規の組織障害のバイオマーカーとなりうることを見出してきた。我々が確立したELISAおよびLC-MSを用いて血中tRNA由来物濃度の測定を行った所、急性腎障害(心臓外科手術を受けた後の患者)および慢性腎臓病の 患者において腎機能の悪化と血中tRNA 由来物濃度に相関性と認めた。さらにこの血中濃度の変化は既存の腎機能マーカーである血清Crの上昇よりも早期から上昇することを認めた。また、細胞障害時におけるtRNAの分解が担う生理的意義の検討を進めた。この検討のために細胞ストレス時のtRNAの分解を行う酵素であるAngiogeninのKOマウスを作成した。腎障害を惹起させた本マウスの解析することで、腎障害の病態形成におけるストレス誘導性のtRNA分解が担う役割の検討を進めている。また培養細胞を用いたストレス実験(酸化ストレス、虚血ストレス)においてtRNA分解の誘導および阻害を行い細胞死への寄与を検討している。各種ストレスおよび酵素誘導により培養細胞においてもストレス誘導性のtRNA分解を確認することができており、細胞生存、細胞応答への影響をMTT アッセイ、migration アッセイ、炎症性サイトカイン発現量の変化等で検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的である腎障害のバイオマーカーとしての血中tRNA由来物質濃度の有用性に関しては、腎機能の悪化と血中tRNA由来物質濃度に相関性を得ることができており、今後は病型ごとの違いや予後との関連の解析を進めていく。Angiogenin KOマウスは樹立されており、現在本マウスの表現形の検討を進めているところである。tRNA由来物の測定や解析に用いる方法は確立されつつおり、今後は解析方法のさらなる改良をすすめる。このため当初の年次目的を概ね達成していると考えられる。
倫理申請をすでに承認されている各種腎臓病の患者検体を用いて、腎臓病の病型、腎機能、予後と血中tRNA由来物濃度の関連性の検討を継続する。Angiogenin KOマウスを用いて、各種腎障害モデル(シスプラチン腎症、アデニン誘発性腎症、5/6腎摘出モデル)を惹起させることで、腎障害発生におけるAngiogeninが関与するストレス誘導性tRNA分解反応の重要性の検討を進める。培養細胞実験でも同様に各種ストレスモデルを用いてtRNA分解反応の誘導および阻害が細胞傷害に与える影響の検討を進めていく。またtRNA由来物質の測定系に関してはさらなる精度の上昇に務めるべく改良を行っていく。
測定に用いる消耗品であるカラムおよびELISAキットの納入が遅れたため、その費用のため次年度に繰り越すため
血中tRNA由来物濃度の測定のための消耗品であるカラムおよびELISAキットの購入に当てる
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
Journal of the American Society of Nephrology
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10.1681/ASN.2014060530
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