研究課題/領域番号 |
26860625
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平野 育生 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00708117)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Kidney / Erythropoietin / transgenic mouse / hypoxia |
研究実績の概要 |
Epo遺伝子上流領域の種間保存性の高い領域のみを用いて作製された-17HCRs-tdTomatoは、トランスジェニックマウスを用いた解析からREP細胞における低酸素ストレス誘導的なトランスジーンの発現誘導が可能である。しかし、その後の解析から内在性のEpo遺伝子発現と比較し-17HCRs-tdTomatoの発現は限局しており、また、誘導率も低い事が示された。高感度のスクリーニング系を確立するためには、より効率よくREP細胞でレポーター遺伝子が発現するレポーター構築が必要である。そこで平成26年度は、Epo遺伝子のREP細胞における制御領域を、より狭い範囲で同定する事を目的に解析を行った。-17HCRsの中には、哺乳類間で保存された低酸素応答性転写因子の結合配列が存在する(-8kHRE)。-8kHREがREP細胞におけるエンハンサーであるという仮定のもと、肝癌由来EPO産生細胞株(Hep3B)を用いたレポーターアッセイを行った。その結果、-8kHRE周辺領域によるHRE配列を介した低酸素刺激誘導的な転写活性化能が示された。 一方で、-8kHREを用いたレポータートランスジェニックマウス解析の結果では、作製した全ての系統においてREP細胞における、挿入されたトランスジーンの発現を確認できなかった。また、Epo遺伝子制御に十分な制御領域から-8kHRE周辺領域を欠失させた構築を用いトランスジェニックマウスを作製し、貧血誘導的なレポーター遺伝子の発現を解析したところ、REP細胞における低酸素ストレス誘導的なレポータータンパク質の発現が確認された。このことから、-8kHREは機能的なHREを含むものの単独ではREP細胞におけるEpo遺伝子制御には不十分であり、また、必須でもないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来の計画では、-17HCRsを用いたスクリーニング用のレポーター構築を作製する予定であった。しかし、-17kHCRおよび-17kHCRsはトランスジェニックマウスを用いた解析から、内在性のEpo遺伝子制御と比較し、その低酸素ストレス誘導的な転写活性化能が低下している事が示唆された。また、依然としてREP細胞由来の細胞株は発見されておらず、REP細胞の株化作業も初代培養までは成功しているものの、細胞分裂が非常に遅く株化に成功していない。そのため、in vitroにおけるスクリーニング系の樹立には他の組織由来のEpo産生細胞株を用いる以外に方法が無い。 -17kHCRsにした事による転写誘導活性の低下の要因として、1) 同量域内には抑制性の制御因子を含む複数の制御因子が存在しており、本来のゲノム上の配列と比較し、それらのプロモーターまでの距離が変化した事により抑制性の制御が強くでるようになった。2) -17kHCR以外の領域にもREP細胞におけるEpo遺伝子発現制御を担う領域が存在する。などが想定された。 今回の解析では主に1)について解析し、-17kHCRs中の低酸素誘導的遺伝子発現制御に重要な転写制御因子として-8kHREを同定したが、これのみではREP細胞特異的な転写制御には不十分であることを示す結果であった。おそらく、REP細胞における低酸素刺激誘導的な発現制御には複数の転写制御因子が関わっており、単純に一箇所の因子として制御領域を同定する事は困難であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を推進する為に、まずはREP細胞特異的な遺伝子発現制御機構の解明することが必須であると考えている。そこで本年度は、達成度の理由の欄に記述した2) について検討を行い、-17kHCRがEpo遺伝子の制御に必須であり、他の領域ではその機能を補償できない事を示す。具体的には、Epo遺伝子発現制御を完全に再現可能である事が示されているEpo遺伝子転写開始点上流60 kbpから下流120 kbpの領域を制御領域として用いたレポーター構築より-17kHCRを欠失させた構築を作製し、トランスジェニックマウス解析により-17kHCRの必要性を示す。この解析の結果、-17kHCR以外にREP細胞における低酸素ストレス誘導的な発現制御を担うことが可能な領域が存在しない事が示された場合、次に、-17kHCRを構成する、各保存性の高い領域(F1,2,3,4)を任意で結合したレポーター構築を作製する。作製したレポーター構築を用いHep3B細胞における低酸素ストレス誘導的レポーター活性の確認およびトランスジェニックマウス解析によるREP細胞特異的制御の確認を行い、REP細胞特異的かつ低酸素ストレス誘導的な発現制御に十分な、最小限の制御領域を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、当初の予定よりも計画が遅れており、現状ではREP細胞由来細胞の培養には成功しているがREP細胞株の樹立には至っていない。そのため、本来行う予定であった、REP細胞株、ISAM::Epo-cre::R26T由来GFP陽性細胞またはtdTomato単独陽性細胞の網羅的遺伝子発現解析による比較、およびqRT-PCR解析による結果の検証を行っていないため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(27年度)は、REP細胞株の樹立を試みつつ、ISAM::Epo-cre::R26T由来GFP陽性細胞またはtdTomato単独陽性細胞と、他のEPO産生細胞株(Hep3B、HepG2、Kelly)及び腎由来細胞株を網羅的遺伝子発現解析により比較し、ハイスループットスクリーニング系に使用可能と思われる細胞株を選定する予定である。本年度に生じた次年度使用額は、本年度に行う予定であったこれらの解析に用いるマイクロアレイキット及びqRT-PCR用のMaster mixの購入費に使用する。 マイクロアレイ解析の結果、及びトランスジェニックマウス解析の結果を反映させた新しいレポーター構築による検討により選定した細胞株を用いたハイスループットスクリーニング系の作製に着手する。翌年度分として請求した助成金は、当初の計画通りハイスループットスクリーニング系の確立に必要な試薬、消耗品の購入費として使用する。
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