腎臓特異的なエリスロポエチン(EPO)発現誘導薬のスクリーニング系を樹立するために、Epo遺伝子の腎臓特異的な転写調節領域の詳細な解析を行った。これまでの解析から、Epo遺伝子の転写調節領域がEpo遺伝子転写開始点上流60 kbpから同下流120 kbpの範囲(60k-BAC)に存在することが示されていた。また、上流 17 kbpから上流 3.5 kbpの領域(CURE領域)に腎臓におけるEpo遺伝子の転写調節領域が存在する事が示唆されていた。本年度は、腎臓におけるEpo遺伝子の転写制御におけるCURE領域の必要性を個体レベルで示すため、Epo遺伝子領域を含む60k-BACよりCURE領域を欠失させた大腸菌人工染色体(dCURE-Epo-BAC)をトランスジーンとして用い、トランスジーン由来のEPO発現によるEpo遺伝子破壊に起因する胎生致死性の回避実験を試みた。Epo遺伝子破壊アリルをヘテロで持つEpo+/-マウスとdCURE-Epo::Epo+/-マウスを交配した結果、メンデル則に従った割合でレスキュー個体(dCURE-Epo::Ep-/-、AnREDマウス)が得られた。しかし、AnREDが得られた全てのラインにおいてAnREDは重度の貧血を示した。また、AnREDの解析から、AnREDは正球性正色素性の貧血であり、重度の貧血にも関わらず、血中EPO濃度は低値を示した。さらに、AnREDは貧血にも関わらず、腎臓におけるEpo遺伝子の発現誘導が消失していた。これらのことから、AnREDはEPO欠乏性の貧血であることが示された。腎臓由来EPO欠乏性の貧血は、慢性腎臓病において併発する腎性貧血と同様であることから、AnREDマウスは腎性貧血のモデルマウスであると考えられる。
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