研究課題/領域番号 |
26860626
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川上 貴久 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10722093)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病新規治療 |
研究実績の概要 |
TRPV4がin vivoで炎症促進・腎傷害増悪作用を有することの証明として,TRPV4ノックアウト(KO)マウスとコントロールとして同胞の野生型マウスを用い,片側尿管結紮モデル(UUO)と片側虚血再灌流モデル(uIRI)を作成した.UUOは術後2日,6日,10日で採材した.いずれも腎のqPCRでは,サイトカイン・ケモカインなどの炎症性メディエーターの発現に有意差は認められなかった.しかし,術後10日では,コラーゲンやa-SMAなどの線維化に関与する分子の発現がKOマウスで有意に低下していた.uIRIは術後2日,8日,14日で採材した.前2者では炎症性メディエーターの発現には有意差を認めなかったが,14日ではKOマウスで線維化が軽減していた. 上記と並行して,集合管細胞におけるTRPV4を介する炎症惹起の分子生物学的機序を解明すべく,マウス集合管培養細胞mIMCD-3を用いたin vitroの系で解析を行った.TRPV4を介して炎症性メディエーターを誘導する病態生理学的刺激を探索するため,まず細胞膜伸展刺激として低張液を用いたが,誘導されなかった.一方,DAMP(damage-associated molecule pattern)として凍結融解を繰り返してネクローシスに陥らせた細胞の抽出液で刺激したところ,炎症性メディエーターを誘導し,かつTRPV4の阻害薬であるRuthenium Redで有意かつ大幅に抑制されたので,DAMPがTRPV4を介する炎症惹起に関与している可能性が示唆された. 以上のことから,炎症を伴う線維化モデルにおいてTRPV4が線維化を促進すること,加えてDAMPがその刺激となっていることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応募書類の研究計画に記した平成26年度の内容については,概ね実施できており,in vivo,in vitroの探索とも仮説を裏付けるようなデータが得られているため.
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今後の研究の推進方策 |
in vivoの実験については,再現性をとるとともに,炎症という観点を中心により詳細な分析を進めていく予定である.in vitroの実験については,DAMPがTRPV4を介して炎症性メディエーターを誘導する機序について,そのシグナル伝達経路をより詳細に解析していく方針としている.またさらに,平成27年度の実験計画にあるように,TRPV4阻害薬のin vivoにおける炎症・腎傷害改善効果の証明へと推進していく予定である.
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