研究課題
遺伝性塩分感受性高血圧疾患である偽性低アルドステロン症II型は腎臓遠位尿細管におけるWNK-OSR1/SPAK-NCCリン酸化カスケードの亢進によって起こる。最近、申請者西田は高インスリン血症モデルマウスであるdb/dbマウスにおける塩分感受性高血圧における、インスリン-PI3K-AktシグナルによるWNKカスケードの亢進を報告したが、AktとWNKをつなぐ機序は不明なままである。最近、Cullin3とKLHL3というE3 ligeseを形成する2つの分子が偽性低アルドステロン症II型を発症する事が明らかになったが、Cullin3とKLHL3がどのように発症に関わるかは不明であった。ヒトのKLHL3変異を有するKLHL3 R528H/+ノックインマウスを作成し、そのメカニズムを明らかにするべく研究を行った。結果、KLHL3は生体の腎臓においてWNK1、WNK4を基質としてユビキチン化し分解に導くことで、WNK1、WNK4の蛋白発現量を適切に保ち、塩分再吸収のNCCを介した調節を行っていることが明らかになった。KLHL3変異はWNK1、WNK4との結合能を失い、WNK1、WNK4のユビキチン化が現象して、結果、蛋白が増加するためにPHAII発症へと至ることを明らかにした(Hum Mol Genet, 2014)。この事実は塩分摂取がどのように血圧につながっているかを明らかにした事で非常に有意義なものと考えられた。さらにインスリン、AktとWNKシグナルをつなぐ因子としてKLHL3のタンパク修飾に注目し、KLHL3リン酸化によってWNKとの結合能が減弱するためにWNK分解が低下して、塩分感受性高血圧がおこる可能性を論文投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
Human Molecular Geneticsに共著者として報告を行い、国際学会にも3演題の報告を行った。さらに現在、共著者として論文投稿中である。
直接的なKLHL3のWNKシグナル調節のメカニズムを明らかにするために、質量分析(LC-MS/MS)を用いてKLHL3のリン酸化部位のスクリーニングを行った。その結果、KLHL3がリン酸化による調節を受けている事を明らかにした。今後、この生理的な制御を明らかにしていく。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Hum Mol Genet.
巻: 23 ページ: 5052-60
10.1093/hmg/ddu217