研究課題
糖尿病性腎症の早期診断と予後予測においては尿中アルブミンの測定が重要であるが、様々な問題点も指摘されており、新しいバイオマーカーの開発が求められている。メガリンは近位尿細管腔側に高発現し、多種の糸球体濾過蛋白質の再吸収・代謝と細胞内シグナル伝達に関わるエンドサイトーシス受容体である。これまでに研究代表者は、ヒト尿中メガリンELISA測定系を開発するとともに、メガリンの尿中排泄量の測定が、糖尿病性腎症患者の重症度や病態評価に有用であり、既存のバイオマーカーとは異なる新しいマーカーになり得る可能性を報告してきた。しかし、メガリンの尿中への排泄機序についての詳細は未だに不明である。一方で、全長型メガリンの尿中排泄はエクソサイトーシスに関連することが示唆されるため、その機序について検討を行った。糖尿病性腎症患者の尿から分離した尿エクソソームをナノ粒子解析システム(ナノサイト)にて解析したところ、健常者の尿に比較して総数および巨大サイズのものが増加していた。さらに、ウエスタンブロットによる解析により、健常者の尿に比較して糖尿病性腎症患者尿においてメガリン含有量が多いこと、またその多くが近位尿細管由来であることが分かった。また、培養近位尿細管細胞において、終末糖化産物(AGE)化アルブミンの過剰取り込みにより、メガリン含有エクソソームの排泄が増加した。以上より、近位尿細管由来エクソソームの尿中排泄動態は糖尿病性腎症の発症および進展機序に関係しており、尿中全長型メガリンはそれを示すバイオマーカーとして有用であり、その解析を継続することは有意義であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
現在、論文作成中であり、Journal of the American Society of Nephrology誌に投稿直前である。
研究計画では、細胞外ドメイン切断型メガリンの逸脱機序の検討を行う予定である。培養細胞系で、酸化ストレスの亢進状態でその逸脱が増加するかについて検討する。また、糖尿尿性腎症患者の尿検体において、還元処理による細胞外ドメイン切断型メガリン測定を行い、腎症の病期や酸化ストレスマーカーとの関連を検討する。
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