研究課題
細胞外小胞Exosomesが、細胞間の新しい情報伝達物質として評価され、癌の進展や免疫細胞の抗原提示など病因論から、バイオマーカー探索といった分野にまで広く研究されてきている昨今、心腎連関を代表とする遠隔臓器連関にもたらすインパクトを評価するために研究を、研究計画にそって進めている。先ずはExosomesの体内での動態を、線虫由来のmiRNAをトランスフェクトしたExosomesで追跡した。結果、体内では肺>>肝臓、脾臓に取り込まれる事がわかった。つまりこれら臓器がExosomesの影響をうけやすいと考えられる。更に導入する外来のmiRNAに、Biotin, Cy5にて標識することで臓器内での局在を調べる準備を行っている。また、計画にはなかったがCD63-GFP蛋白を強制発現させ、分泌するExosomesが全てGFP陽性になる線維芽細胞を樹立し、ヌードマウスに皮下腫瘍を作成することに成功した。こちらでは局在のみならず、WBによる定量も行う予定である。次にin vitroで活性化腎線維芽細胞由来のExosomesが、血管内皮細胞に及ぼす影響を調べた。文献から、腎不全患者の血清は、HUVECに対し接着分子、PlGFの発現を強くし、PlGFのデコイレセプターであるFlt1を抑制する事がわかっている。本実験系ではPlGF, Fltは腎不全血清と同様な動態を示したが、接着分子の発現は、反対に発現を抑制する方向に働いていた。つまりExosomesには一部抗炎症性の作用を持つことが示唆された。Vivoに関して、腎線維化モデルであるUUOモデルでVitroの再現ができなかったことも有り、このin vitroで確認された効果がどの程度Systemicに影響を及ぼしているか、腎不全患者血清を用いて再検討する方針としている。
2: おおむね順調に進展している
in vivoの実験において、仮説通りの結果とならなかったことも有り、Exosomesの全身的な影響については若干疑問が残る結果となっている。但し、影響力がどの程度かという点に関し、他の実験系を立ち上げる事で評価する方針に変更し、準備は順調に進んでいる。計画書で予定していたmiRNA arrayに関しては、状況が進んだ時点で今後行う方針である。
通常腎不全患者では動脈硬化が進みやすいことが臨床的に知られており、また既報の文献からも、患者血清中には動脈硬化進展性の因子が含まれることが知られている。今回のExosomesに関しては、PlGF、Flt1系に関しては仮説通り動脈硬化進展性に関与していたが、接着分子(E-selectin, VCAM, ICAM)に関しては、予測と反して動脈硬化抑制的に働いていることが示唆された。この相反する結果を、腎不全患者に含まれる尿毒素、酸化物質からの血管系ストレスを一部抑える働きをしていると考え、臨床検体で証明する方針に切り替えた。透析導入期(CKD G5)の患者血漿を用いる予定で、問題点としては、バックグラウンドが揃わないため、内皮細胞への影響もバラつきが生じやすい点、また実験系を安定化させる指摘な刺激時間、血漿量なども最適化し無くてはならない。Preliminaryな実験として、ラットの血漿を用い、ラット血管内皮細胞を刺激して、条件の設定に努めている。
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