研究課題
昨年に引き続き、IgG4関連疾患(IgG4RD)患者の血清学的検査、臓器病変数、血清線維化マーカーなどと臓器予後(画像的、血清学的)との関連性を解析・評価した。方法としては、IgG4RD患者(30名)の血清学的・病理組織検査および造影CT・FDG-PET/CTにて臨床所見を評価した。次に臓器病変数に応じて、多臓器群、限局群に分けて、比較検討も行った。その病変数、線維化マーカー、(画像的、血清学的)臓器予後との関連についても検討した。多臓器群では限局群と比較して、ChEやDKK-1が低値であった。これらの低ChEおよび低DKK-1血症は線維化スコアと負の相関を示した。さらに2年のフォローアップの検討では、基礎の(治療前の)ChEやDKK-1が低値の群ほど、治療後もCTなど画像的に病変臓器の萎縮進行を認める傾向が示された。これらのことは、IgG4RD患者において、血清ChE値や血清DKK-1値が疾患予後の新たな指標となる可能性を示唆する。IgG4関連疾患の腫瘍化の検討では、IgG4関連疾患患者では悪性腫瘍の既往もしくは疾患発症後の悪性腫瘍の発症の頻度が非IgG4関連疾患群に比して、有意に高い傾向があり、さらに集積し解析継続中である。さらに、本年はIgG4RDの一部に病変に典型的な花筵状線維化を認めながらラングハンス巨細胞と伴う肉芽腫性変化を来すものがあることを当科より報告した。IgG4RDで肉芽腫性変化を来すもの、来さないもの、および肉芽腫変化を来すサルコイドーシス、良性耳下腺・顎下腺腫瘍などの患者の血清および組織サイトカインプロファイルを比較検討することを開始した。中間段階ではあるが、血清学的には肉芽腫形成・巨細胞形成に関与が指摘されているIL-4、IFNγ、IL-10、TGFβなどはそれぞれ群間において有意差を示さなかった。現在、組織蛋白レベルでの比較検討を準備中である。
2: おおむね順調に進展している
組織検体処理・蛋白抽出などに時間を費やすことが多かったが、本年度からサイトカインのELISA解析に費やすことが可能となり、現在も解析中である。さらに、IgG4関連疾患の腫瘍化についての検討では、IgG4関連疾患患者では悪性腫瘍の既往もしくは疾患発症後の悪性腫瘍の発症の頻度が非IgG4関連疾患群のそれらに比して、有意に高い傾向があり、これらについてもさらに集積し解析継続中である。
保存血清および組織から抽出した蛋白などを用いて、サイトカインプロファイルの比較検討をELISA解析により進めていく予定である。また組織染色を追加することで、病変組織上での発現蛋白の相違を検討し、病態解明につなげていく予定である。
保存血清収集および組織蛋白抽出に時間を要したため、ELISA解析などを開始し始めたところであり、これらの時間を費やすことがやや困難となっていたため次年度使用額が生じている。
保存血清および組織抽出蛋白からのサイトカインプロファイル解析および組織染色による発現蛋白解析を予定通りに行っていく。
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Rheumatology (Oxford)
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