研究実績の概要 |
現在透析療法に至っている患者数は全国で30万人を越え、特に急性腎障害は、患者の高齢化などにより発症頻度は高まっており、全入院患者の5%、ICU入院患者の20%で発症するといわれている。急性腎障害をおこした場合長期的な腎機能低下と生命予後の悪化が起こる。本研究では、尿細管細胞のミトコンドリア機能の保持およびミトコンドリアのオートファジー (マイトファジー/Mitophagy, mitochondrial autophagy)の調整をすることにより、腎機能の保護、回復・再生を目標とする。具体的には、1) 尿細管細胞におけるマイトファジー系の腎保護への関与、2) 急性腎障害におけるミトコンドリアの機能保持の新規薬物による調整、3) 急性腎障害腎生検検体でのオートファジー/マイトファジー検出とその意義の検討である。 近位尿細管はミコトンドリアの含有量が高く、オートファジー/マイトファジーは尿細管の脱分化、再生に関与する可能性は高い。申請者らの研究室ではSestrin2とBNIP3に注目し、これらの遺伝子が虚血で近位尿細管細胞で誘導されオートファジーを促進する事を見いだしている。ミトコンドリア障害が急性腎障害の病態の主体とする考えはいままでになく、薬物(ALA)や遺伝子制御によるミトコンドリア障害の防御、マイトファジーの調整による急性腎障害の新規治療法の開発は新規性が高い。腎生検検体での検討により、臨床的な発展も期待でき、患者数が急増している急性腎障害と透析導入の画期的な治療法に結びつく可能性がある。
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