平成27年度において申請者は、慢性炎症誘導蛋白であるANGPTL2がヒト腎臓において線維化に伴い尿細管で多量に発現し、その発現がコラーゲン線維や線維化促進因子TGF-βと関連することを明らかにした。さらに、動物実験や細胞実験などの結果から慢性腎臓病進展において「慢性炎症」と「線維化」つなぐ新たな分子機構として、ANGPTL2が線維化促進因子TGF-βとシグナル増幅回路を形成すること、マクロファージ浸潤を誘導し更なる「炎症」を惹起することにより腎線維化を進行させること、さらにANGPTL2抑制によるサーキット遮断によって腎線維化進展の緩和が可能であることを見出した。これらの研究結果からANGPTL2がCKD診療における新規治療ターゲットとなることが示唆された。 なお、本研究により得られた成果はKidney International誌へ報告済である。(ANGPTL2 increases renal fibrosis by accelerating TGF-β signaling in chronic kidney disease Kidney Int. 2016 Feb;89(2):327-41.)
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