研究課題
人体の主要臓器である腎臓は再生しないが発生期には腎臓を造り上げる前駆細胞集団が確かに存在している。しかし、それらはネフロンを構成する細胞へと分化し生後には消失する。このことが腎臓が再生できない理由の一つと考えられる。我々はこれまでに、ラットのネフロン前駆細胞を未分化の状態で増幅する初代培養法を確立し、この培養系を用いてHippo経路の主要因子Yapがネフロン前駆細胞の分化と維持を制御するという新たな機構を発見した。本計画は、この知見をラットネフロン前駆細胞初代培養法の改善に応用し、未だ確立されていないマウスのネフロン前駆細胞の培養にも適用することで動物種を越えた自己複製法を確立することを目的とする。これまで困難であったネフロン前駆細胞の自己複製法の確立は、腎臓再生医療の基盤構築に重要である。これまでにYapが核内に維持される培養条件を未分化維持の指標として、ラットのネフロン前駆細胞を用いて検索を行った。その結果、最適な培養条件下で増幅したネフロン前駆細胞が、尿細管や糸球体といったネフロンを構成する重要な器官を形成する能力を維持していることが分かった。さらに、ネフロン前駆細胞の未分化維持に必要な細胞内シグナル経路及びYapの制御メカニズムを明らかにした。今後、ラットで得られた培養条件をマウスのネフロン前駆細胞の培養法に応用し、動物種を越えた自己複製法の確立を目指す。
2: おおむね順調に進展している
申請計画に沿って、一年目に、尿細管や糸球体に分化する能力を維持したラットのネフロン前駆細胞の初代培養法の改善に成功した。また、ラットのネフロン前駆細胞の未分化維持及び増幅に重要な細胞内シグナル経路及びYapの制御メカニズムを明らかにすることができたため。
ラットのネフロン前駆細胞培養で得られた培養条件をマウスのネフロン前駆細胞に適用する。さらに、ネフロン前駆細胞に発現する転写因子Six2のプロモーター制御下にGFPを導入したトランスジェニックマウスを使用すれば、培養期間中のネフロン前駆細胞の細胞数の変動をFACSによって定量的に解析可能である。培養条件を最適化することによって、最終的にはFACSで単離したSix2-GFP陽性の細胞だけで増幅を試みる。本計画二年目ではSix2陽性のマウスネフロン前駆細胞の自己複製法の確立を目指す。
本件の研究目的を2年間で達成するために研究費を計画的に使用しているため。
1年目と同様、研究計画に沿って、細胞培養消耗品、実験マウスの購入及び維持費に使用する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (2件) 備考 (1件)
J. Am. Soc. Nephrol.
巻: 25 ページ: 2584-2595
10.1681/ASN.2013080896
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/newpress/np70.html