研究課題/領域番号 |
26860646
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
城 理絵 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30464861)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミネラルコルチコイド受容体 / 転写共役因子 / GWAS解析 / ヒストンメチル化修飾酵素 / Evi-1 |
研究実績の概要 |
これまで我々は、ミネラルコルチコイド受容体(MR)活性化機構の分子機序について、様々な方面から焦点をあててきたが、本研究では、新規MR転写共役因子の探索およびその機能解析という観点で検討を行った。FLAGタグ付きMR安定発現HEK293細胞の核抽出液に対し、FLAG抗体を用いたアフィニティ精製を行い、LC-MS/MSによるMR相互作用因子の同定を行ったところ、その中で疾患特異的SNPのGWAS解析で、本態性高血圧症や腎機能障害の発症に深く関与する遺伝子Evi-1に着目し、その機能解析を行った。まず共免疫沈降法により、MRとEvi-1の結合を確認し、リガンド非依存性に結合していることを証明した。Evi-1はその分子内に、ヒストンメチル化修飾酵素活性を有するSETドメインを持つため、MR転写活性に対し、抑制性に作用することが予想された。Evi-1発現ベクターを作製し、MR転写活性に対する影響を、Luciferaseを用いたレポーターアッセイおよび内因性MR標的遺伝子発現(SGK1、ENaC)で確認したところ、予想に反して、MR転写活性の増強を認めた。また、siRNAを用いたEvi-1ノックダウン下においても、MR転写活性の増強を認め、両者で相反する結果が得られた。詳細な検討を行ったところ、Evi-1には、全長を有するEvi-1cとSETドメインを欠くEvi-1aの2つのアイソフォームが存在し、Evi-1c過剰発現下においては、Evi-1aもともに生成され、それがdominant negativeとして作用するため、Evi-1本来の機能と正反対の方向にMR転写活性を調節することが判明した。現在、Evi-1aの生成を抑える条件を模索するとともに、Evi1cのアイソフォームのみを特異的にノックダウンするsiRNAをデザインするなど、2つのEvi-1アイソフォームの機能を分離した上での検討を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規MR転写共役因子の候補として、Evi-1を同定し、MRとの結合の確認、発現ベクター作成などの段階までは、順調に経過した。分子内ドメインからMR転写活性に対する機能は予測できたが、dominant negativeのアイソフォームが存在するため、そのことが解析結果を複雑にしている。各アイソフォームの機能の分離について複数の検討が必要になったため、当初の達成目標よりやや遅れているが、想定範囲内である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、in vitroの系におけるEvi-1の機能解析研究を完成させることを第一の目標とする。siRNAのデザインを工夫し、Evi-1c(全長)、Evi-1a(SETドメイン欠如)の2つのアイソフォームの機能を分離した形で、機能解析を行う。 また、SNPタイプとEvi-1遺伝子発現(あるいはEvi-1cとEvi-1aの発現比)の変化の関連を明らかにし、Evi-1はMRコリプレッサーとして機能することが予測されることから、そのSNPタイプとMR転写活性および高血圧への影響に関連性がみられるかを、臨床検体・臨床データを用いて検討していく。臨床サンプルの使用に関しては、すでに倫理委員会申請は済んでいる。
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