これまでミネラルコルチコイド受容体(MR)活性化機構の分子機序として、新規MR相互作用因子Evi-1の機能について解析を行ってきた。Evi-1はSETドメインを持つことから、ヒストンメチル化修飾酵素としてMR転写を負に制御することが予想されたが、発現ベクターを用いてEvi-1を過剰発現させたところ、予想に反してMR転写活性を増強した。Evi-1には、全長を有するEvi-1cとSETドメインを欠くEvi-1aの2つのアイソフォームが存在し、Evi-1c過剰発現下においてはEvi-1aも共に生成され、それがdominant negativeとして作用するため、Evi-1本来の機能と正反対の方向にMR転写活性を調節すると考えられた。 そこで、Evi-1cのアイソフォームのみを特異的にノックダウン(KD)するsiRNAと Evi-1aおよびEvi-1cの両方のアイソフォームをKDするsiRNAの2種類をデザインし、MR転写活性に対する影響を、Luciferaseアッセイおよび内因性MR標的遺伝子発現で確認した。するとEvi-1cのみを特異的にKDするsiRNA処置下では、いずれのアッセイ系においてもMR転写活性の増強を認め、Evi-1cがMRの抑制性の転写共役因子として機能していることが確認された。一方、dominant negative機能を持つEvi-1aも同時にsiRNAでKDすると、MR転写活性の増強は消失した。 Evi-1のSNPタイプとEvi-1c/Evi-1aの発現比率の関連について、Evi-1cの発現比率を上昇させるSNPタイプでは高血圧になりにくく、Evi-1aの発現比率を上昇させるSNPタイプではMR感受性が亢進し、高血圧を呈しやすくなることが予測され、現在検討を進めている。本研究によりヒストンメチル化修飾のMR活性調節における重要性が示された。
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