研究実績の概要 |
腎重量、尿アルブミン/L-FABP排泄量、血漿シスタチンC値、腎線維化・尿細管障害・炎症および電子顕微鏡下における近位尿細管細胞のミトコンドリア(Mt)の膨化/断片化はZL群に比べZDF+STD群で有意な増加を認めた。ZDF+STD群での変異は18週間のCRにより改善。CRによる腎障害改善効果はHbA1c値が部分的な低下もZL群とほぼ同等までに改善したことより血糖低下効果とは独立した作用である。尿中8-OHdG排泄量・腎皮質MtDNA中8-OHdG含有量は、ZL群に比べZDF+STD群で有意な増加を認めた。Mn-SOD, イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)2の抗酸化酵素活性は、Sirt3による脱アセチル化により制御を受けている。糖尿病腎におけるMn-SOD,IDH2アセチル化は、ZL群に比べZDF+STD群で増強していることから、糖尿病腎ではSirt3活性低下に起因するMn-SOD,IDH2のアセチル化の亢進/活性低下とMt酸化ストレスが増強した可能性がある。Sirt3の発現量にZL群とZDF群間で差を認めなかったため、現在腎におけるNAD+/NADH比の測定を行っている。 通常Mtは酸化ストレスを含む細胞内ステレスにより障害を受けると、その障害部位を分裂し切り離した後、Mtバイオジェネシスの増加と引き続き生じるMt融合によりその恒常性が維持される。分裂し断片化したMtはオートファジー(AP)による分解後リサイクルされる。電子顕微鏡による近位尿細管細胞Mtの形態的観察において、糖尿病ラットでは、Mtの膨化/断片化などの形態異常が存在していること、またDRP(Mt分裂関連蛋白)の発現増加およびp62の蓄積(AP低下の際増加)を認めた。これらの結果から糖尿病腎近位尿細管では、Mt酸化ストレス亢進⇒Mt分裂増加⇒AP機能低下による断片化Mtの細胞内蓄積⇒更なる酸化ストレス、炎症、尿細管細胞機能障害⇒腎線維化⇒腎機能低下をきたしている可能性が推察される。
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