2型糖尿病(Zucker diabetic fatty (fa/fa):ZDF)ラット(DM)と非糖尿病(Zucker Lean:ZL)ラット(Cont)(27週齢雄)における、HbA1c値、 腎重量、 尿アルブミン(UALB)/L-FABP(LFAB)排泄量、 血漿シスタチンC値(CysC)、腎線維化:マッソントリクローム染色・3型コラーゲンmRNA発現、 尿細管細胞障害:Kim1免疫組織化学(IHC)/mRNA発現、 炎症性変異:CD68 IHC/mRNA発現、IL6・TNFα mRNA発現、 Mt酸化ストレス・Sirt3関連:尿中およびMtDNA中8-OHdG、Mn-SOD/IDH2発現・アセチル化、Sirt3、CD38発現、 オートファジー/Mt恒常性関連:p62、DRP1発現、近位尿細管(PTEC)におけるMtの形態(電顕)を評価した。その結果、HbA1c、腎重量、UALB/LFAB/尿中8-OHdG排泄量、CysC、腎線維化/尿細管障害/炎症はCont群と比べてDM群で有意に上昇していた。またDM群ではCont群と比較してMt酸化ストレスの増強およびオートファジーの低下とMt分裂・融合バランスの不均衡、Mt形態異常をみとめた。さらにDM群ではCD38の発現増加がみられ、NAD+消費の亢進からSirt3活性低下に関連している可能性が示唆された。また高ブドウ糖濃度(540mg/dl)培養下ヒトPTEC株(HK2)においてもMn-SOD/IDH2発現/アセチル化、CD38発現の増加がみられた。以上より2型糖尿病腎PTECでは、NAD+消費の亢進に起因するSirt3機能の低下がMt酸化ストレスの増強に寄与しており、さらにMt分裂増加とオートファジー機能の低下の結果、Mt恒常性の破綻が生じ、腎症の発症・進展に関与している可能性が考えられた。
|