組織トランスグルタミナーゼ(TG2)は内皮細胞,線維芽細胞等生体内に広く存在している。TG2は主に細胞内に存在し,通常では酵素活性は持たないが,TG2は細胞外に分布すると酵素活性を持つ。TG2は,慢性腎臓病や糖尿病動物モデルでの間質線維化に関与すると近年報告されたが,ヒト腎臓における病的意義は未だ明らかではない。TG2は活性型で生理作用を持つため活性型TG2の検出が必要である。Hitomiらはランダムペプチドライブラリーを用いTG2に高反応性の基質配列を同定した。そこで我々は,藤田保健衛生大学病院にて2010年から2013年に行われた腎生検組織(n=241)のTG2の活性を,FITCラベルTG2特異的高反応性基質ペプチドを用いて検討したところ,IgA腎症(IgAN)の54%(n=65),ループス腎炎(LN)の58%(n=40),IgA血管炎を含む二次性IgANの64%(n=11)にメサンギウム領域のTG2活性を検出した。一方,その他の糸球体疾患(n=125)は6%にわずかなTG2活性を認めるのみであった。さらに,IgANにおいてメサンギウム領域のTG2活性は,蛋白尿及びOxford分類のメサンギウム細胞増多(M)に関連し,LNでは血尿と組織学的活動性に関連を認めた。以上より,メサンギウム領域のTG2は,メサンギウム領域に免疫複合体の沈着を認める腎炎において,疾患活動性に関与することが示唆された。ヒト培養メサンギウム細胞は,細胞質内に豊富にTG2を持つが通常活性化していない。細胞外ではCa濃度依存下にTG2は活性化する。ヒト培養メサンギウム細胞にTG2を添加すると,細胞増殖を認めることから,TG2はメサンギウム細胞において,タンパク質間にイソペプチド結合を形成し,細胞増殖刺激を起こす可能性が考えられた。
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