研究課題
本研究では『脳内オートファジーの活性化が異常αシヌクレインの蓄積を防止し、レビー小体病の症状を改善する』可能性を検証することを目的とした。正常マウスにトレハロースを給水投与したところ、1週間の給水投与で脳内オートファジーの活性化が認められた。しかし、3週間及び24週間の長期投与では、この効果は認められなかった。そこで、トレハロースの短期給水投与(3日間)によるレビー小体病モデルマウスへの効果について検討した。トレハロース投与群では、マルトースおよびショ糖投与群と比較して、脳内オートファジーの活性化が認められたが、ヒトαシヌクレインの発現量および発現部位に差は認められなかった。マウスの実験結果から、PDにおいて、オートファジーが活性化されていても、オートファジーが十分に機能できない病態があるのではないかという仮説に至った。まず、PDモデル培養細胞を用い、オートファジー上流分子(ULK1、ULK2、VPS34、Beclin1、AMBRA1)のウエスタンブロット解析を行った。レビー小体様封入体の形成に伴い、AMBRA1を除くオートファジー関連分子の発現量は経時的に増加していた。次に、PDおよびDLB患者の剖検脳を用い、免疫組織化学染色及び2重蛍光染色を行った。ULK1、ULK2、VPS34、AMBRA1は、成熟したレビー小体に陽性であった。さらに、DLB患者と正常対照群のbrain lysateを用い、ウェスタンブロット解析を行った。ULK1ならびにULK2は、DLB脳の可溶性分画において発現が確認された。VPS34、Beclin1は、不溶化分画において異常αシヌクレインの発現部位に一致してスメア化していた。以上より、オートファジーの上流分子はレビー小体の形成にかかわっていることが示された。しかし、本研究の結果はレビー小体が既に成熟した段階でオートファジーが活性化されている可能性があることを示すものであり、PDではオートファジーが十分に機能できない病態が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
マウスの実験結果から、オートファジーが活性化されていたが、異常αシヌクレインの蓄積を防止するには至っていないことが分かった。その後の追加実験から、オートファジーが適切な時期に十分に活性化されていない可能性が示唆された。当初の目的である、①レビー小体病モデルマウスの症状改善にトレハロースは有効か?、②投与後の組織変化(封入体形成および前シナプスに及ぼす影響)は?、③投与後の異常αシヌクレインへの影響は?、④ヒト脳の各種病態(神経変性、虚血、炎症、腫瘍)におけるトレハロース誘導遺伝子群の病理学的および生化学的変化、⑤マウス初代培養神経細胞における、遺伝子群導入によるオートファジー活性化の有無、の5つの目的のうち①-③については、達成できた。しかし、PDにおけるオートファジーの機能異常が示唆されたため、④および⑤については未評価である。
これまでの研究結果を論文化し、報告する。さらに、レビー小体形成のどの時期にオートファジーが活性化され始めるか生化学的に評価する予定である。
抗体などの物品を安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。
物品購入に次年度使用額をあてる予定である。
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Neurobiology of Disease
巻: 74 ページ: 25-31
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Brain Pathology
巻: - ページ: -
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