研究課題
レビー小体病(パーキンソン病、レビー小体型認知症)では、α-シヌクレイン(a-syn)の異常蓄積が神経細胞の胞体および神経突起に認められ、さらにタンパク質分解酵素に耐性を示す異常a-synが軸索末端に多量に蓄積している。これらの知見から異常a-synの蓄積が神経細胞の機能不全を引き起こし、レビー小体病の病因の一つであると考えられている。本研究では異常a-synの蓄積を防止、または軽減することでレビー小体病の症状を改善する方法を模索した。特に脳内の代謝を活性化する細胞内分解システム(オートファジー)に着目し、以下の知見を得た。1)オートファジーを調節する分子の一つBeclin1の15番目セリン残基をリン酸化することで、オートファジーの活性化がはじまること、2)トレハロース短期投与(1週間の給水投与)が脳内オートファジーを効率的に活性化すること、3)複数のシャペロン分子(HSP90、SIGMAR1)が発現亢進したこと、4)脳全体のa-syn量には変化がなかったが、 Triton X-100に不溶性のa-synが減少したこと、5)ヒト培養細胞および患者検体を用いて、細胞内の小胞体関連分解を活性化すると細胞内凝集物の形成が有意に抑制されたこと、6)ヒトレビー小体病の患者脳内ではオートファゴソーム形成を調節する分子群の異常があること、である。トレハロースは培養細胞およびマウス脳内において効率的にオートファジーを誘導したが、異常凝集に対する効果は限定的であった。これは、細胞内分解機構を活性化すべき時期は、異常a-synが線維凝集する前の段階(オリゴマー)であることを示唆する。本研究の結果は、孤発性シヌクレイノパチーの病態解明にむすびつくと同時に、治療標的ならびに治療介入時期を示唆するものである。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 12件、 査読あり 12件、 謝辞記載あり 12件、 オープンアクセス 1件)
Neuropathology
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